グノーシア短編集＊LOOP3＊ (ページ39)

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夜、部屋の扉が開いた音で目が覚めた。どうやら閉め忘れていたようだ。

侵入者は「ふわぁ…」とマヌケな大欠伸をした後、何を思ったのか。僕の寝ている布団に潜り込み、そのまま胎児のように小さく縮こもった。

「(………？……？)」

一瞬、ワケが分からなかった。
グノーシアかと思って警戒していたが、ソイツはただ布団の中に入り、むにゃむにゃと寝言を口にするだけ。

暫くすると寝息さえ聞こえて来て、そこで僕はようやく確信する。『コイツ、寝惚けて部屋間違えたンだな』と。

「(こンな夜中に夜這いとは大胆な。叩き起してやろうか)」

人騒がせな。グノーシア騒動で船内は警戒モードだと言うのに。

腹が立ったのもあって僕は起き上がると、文字通り叩き起してやろうと手を振り上げた。

「＿＿＿＿セツ、」

次の瞬間には振り下ろそうとした、その時だ。

ぽつり、彼女の口から昨日襲われた者の名前が溢れて僕は思わず腕を掲げたまま固まる。
次第に彼女の瞳からポロポロと涙が流れ始め、僕は腕を下ろすと彼女は更に縮こまった。

「ど、こに……いる、の……？
……いか、ない、で……」

「…………」

「ごめん……なさい………
おいて……いか、な…い……で…………」

……何か夢でも見ているのだろうか。
胸の前で折り畳まれていた片腕がおもむろに動き出し、僕に向かって伸ばされる。

中途半端に開いた手は何か縋る物を探しているかのよう。

この時の僕は、何を思ったンだろう。

気付いたらその手に、自身の手を握らせていた。