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腕に力が込められ、私は抗うのを止めると、沙明は1度私から離れて肩に手を置いた。
「……俺は、1人になりたくない」
「な、ならっ…わ……私を、コールドスリープすれば、いいよ……!レムナンが、いるから……」
「それは俺が堪えられない。野郎と2人きりなんてゴメンだしな。
第一、お前じゃないとこうして触れる事も叶わないんだ。俺は案外寂しがり屋だからなァ?いつかタガが外れるかもしれねぇ」
「な……なら、グノーシアの人を起こせばいいよ……!同じグノーシアなら、触れられ……」
「お前じゃないと、ダメなんだ。
……Aじゃないと、俺は……」
今にも泣きそうな顔で、そんな事を言われた。
まるで小さな子に言い聞かせるように、言われた。
肩に置いていた右手を頬に滑らせ、そっと私の頬を撫でる。こうなる前の彼からは想像もつかないくらい優しくて、あたたかい手。
この手に縋れたら、どれだけ良かっただろう。
……でも、そんな事できない。
私だけは、そんな風にしてはいけない。
湧き上がる感情を必死に抑え、私の頬を撫でる沙明の手を、私はゆっくり払う。
沙明はまるで子供のような悲しそうな顔をした。
また、傷付けてしまったのだろうか。
でも彼の好意を受け取るには、あまりにも私の存在は許されなくて。
私達にとって、この世界は何もかもが誤っていて。
「…………シャワー、浴びて来るね」
「……」
「……また、後でね」
涙を堪え、私はそう言うが早いか、そのまま踵を返してシャワールームに向かう。
途中で堪え切れなくて、ポロポロと溢れてしまった。
涙で滲む視界の中、私は嫌でも考えてしまう。
「(どうしてっ……!)」
どうして、
こんなに私は、苦しいのに。
沙明も、苦しんでいるのに。
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