グノーシア短編集＊LOOP3＊ (ページ14)

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自分でも整理できない感情の変化に戸惑っていると、今度は頭の上にぽん、と何かが置かれ、ソレがゆっくり動き出す。

その心地良い感触と何処か懐かしいリズムに私は驚いた後に安堵してしまう。沙明が私の頭を撫でているって事に気付く刹那の間、その手の感触に身を委ねていた。

「＿＿＿＿A、」

また、名前を呼ばれた。
でもその声音はどこか熱が孕んでいるような気がして。

しかもなんか、さっきより近い気がして。

「…A。

俺の可愛いAちゃん？」

耳が、こそばゆい。
沙明が、耳元で囁いている。

それでも私の頭を撫でる手は本当に優しくて。
温度差で風邪を引いてしまいそう。

ここで私は寝たフリをした事を後悔した(遅い)

途中で起きてしまえば、彼のこんな一面を知らないで済んだのに。

こんな、こんな優しい声で私を呼ぶ彼なんか知らないで済んだのに。

「…………だったら、どれだけイイんだろうな」

そろそろ心臓が保たない、と思った所で沙明はそう言葉を付け足した。

同時に私から沙明の気配が離れた。
でも私の心臓はまだドキドキしていた。

「俺がまだワルい狼サンじゃなくてヨかったな？

起きるまで見張っててやるから、ゆっくりオヤスミ」

最後に沙明はそう言って私の頭を撫でてから、私から完全に離れて行った。

でも私は暫く起き上がれそうになくて。
沙明以外の別の人が来た気配がするまで、熱の残った身体で寝たフリを続けた。