グノーシア短編集＊LOOP3＊ (ページ13)

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いやマジ沙明の声聞いてサッと一瞬自分の体温下がったね。だってあの沙明だもん。貞操の危機を感じた。

とはいえ今までのループで沙明は根本的には悪い人ではないし、無理やりスるような人では無いと知っていたので、何とか自分を落ち着かせ少し様子を見る事にした。

これで本能のまま襲おうものなら、セツから教わった護身術で目に物見せてやろうと密かに拳を握り締める。

そんなこと考えてるとは夢にも思っていない様子の沙明が、私の寝ているソファの元に歩み寄って来る気配を感じた。

「ン〜〜？」と唸る声が聞こえる。
私の顔を覗き込んでいるのだろうか。

ここで目を覚ませば良かったものを。
本当にどうしたんだろうか。

私はそのまま寝たフリを続行してしまった。

「……A？」

名前を呼ばれ、心臓がキュッとする。
寝たフリがバレたんじゃないだろうかって思うと、別に疚しい事とかないはずなのにドキドキした。

その後は沙明は何を思っていたのか。
暫くは静かになり、私の心臓の音だけが私の中で響いていた。

ふと、また沙明が動く気配がした。
それと同時に、沙明の気配が更に近付いた気がした。

あ、これマズイか？と思う頃にはもう遅く。
私の頬にぷにっ、と何か先端の丸い細長いモノが刺さる。おそらく沙明の指だろう。

少しの間、私の反応を確かめる様に何度かぷにぷにと人の頬をつつき、気の抜けた声で小さく笑う声が聞こえた。

「ナーニこんな所でおネンネしてるんだよ…？ワルぅい狼サンに見つかったらどーすんだ？」

セリフが相変わらずだったけれど、不思議と危機感を感じなかったのは、声が優しかったからだろうか。

私を起こさないように気を使ってくれているからか、まるで子供に言い聞かせるような柔らかい声でそう囁く沙明。
今までになかった、そんな沙明に私は内心驚いてしまって。

……同時に、ドキッとしてしまって。