寝たフリ【沙明】 ページ12
ただの好奇心だった。
「____A、」
ちょっと気になったからやってみたってだけで。別に大した期待はしてないし。どうせスルーされるか、勝手に身体触れるぐらいかと思って。
後者だったらぶっ飛ばしてやろって気持ちで。
そんな軽い気持ちだったんだけど。
「……A。
俺の可愛いAちゃん?」
気付いたら私は信じられないぐらい優しい手付きで沙明に髪を撫でられながら、愛おしそうに名前を呼ばれていた。
表情もまるで恋人に向けるそれで。
でも勿論、私達は恋人なんて関係じゃないし。
そもそもこんな彼は初めてで。
私は内心酷く困惑しながらも、それを決して表に出す事はなく。私は必死に目を開けないようにして寝たフリに専念していた。
………どうして。
どうして、こうなった………???
−−−
いや、理由は明白。
私が娯楽室のソファで寝転がっていたのが全て悪い。
更には人が来た気配を察した私は何を思ったのか。
ソレが誰かも確認せずに目を瞑って寝たフリをし始めたのだ。
何故、私はこの時寝たフリをしたのだろう。
この船には今、グノーシアが2人闊歩している状況なのに。
そうでなくても何でも下ネタ男の沙明に、何をするか分からない廃人ジョナス。寝てる人がいたら顔に落書きしそうなSQがいるのに。
この時の私は本当に何考えてんだろう。もしかしたら直前まで寝てて寝惚けていたのかもしれない。
とにかく私はソファの上で寝たフリをして。
相手がどう出るのか。それとも何にもしないのか。
ほんの少しの期待を抱いていた。
「んァ?俺様の特等席に先客ゥ?ンだよ」
その声の主が沙明だと知るまでは。
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