ただかわいいって言われるだけの話【真名部陣一郎】 (ページ5)

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かわいい親衛隊ページ5

「「A様〜〜！！」」

とある日のヨットハーバーグラウンドにて。
いつも通り全体で練習をしていたら、突如女子生徒の集団が押し寄せて来ました。

ざっと数えただけで20人ほど。
彼女達はAさんを見つけるとパッと表情を明るくさせました。

「えっ……と、あの人達は……」

「……ああ、私に用があるみたいだね」

丁度休憩していた彼女はタオルを肩に掛けると、にこりと笑って彼女達の元へと向かった。

そうして一言、二言話すとそのまま彼女達を引き連れて何処かに行ってしまいました。

突然の出来事にグラウンドにいた者は皆、唖然。

ただ、一部の方は事情を知ってるのか、加えて驚いているようでもありました。

「あれがAの言ってた親衛隊かぁ……」

「親衛隊？野咲なんか知ってるのか？」

「ほら、Aだけ毎日贈り物とかお手紙とか貰ってるでしょ？あれ、A曰く自分の親衛隊が代わり番こに送って来てるらしいわよ」

「親衛隊って……」

「彼女、通ってる女子校では所謂〝王子様〟として持て囃されているみたいだよ。加えて演劇部に所属していて、男役ばかり努めているし、あの性格にあの容姿でしょ？女子に人気が高いのも頷けるよ」

「確かに優しいし、気さくだし、中性的だし……王子様って言われるのも分かるかも……」

どうやら彼女は〝王子様〟として学校では人気者のようです。大方、校内でも〝かわいい〟と振り撒いているのでしょう。女子は特に納得しているようで、野咲さんも空野さんもうんうん頷いていました。

でも僕にとっては最初から最近まで〝かわいい〟と言われ続けて、その度に注意しているのに直さない人なんです。

いくら優しくても、良い人でも
気に入らないものは気に入りません。

「……だからって、練習中にああやって呼ばれるのはどうなんです？どうせ対した話もしないでしょうに……せめて練習が終わってからにしてもらわないと、こちらも迷惑です」

事実をそのままボヤいたら、鉄門くんに「お、嫉妬か？」と言われました。何故か。

僕はそんな彼を睨みつけて「フンッ」と鼻を鳴らすと、そのまま自分の練習に戻りました。