かわいい御登場 ページ27
……でもちょっと気になる点が1つ。
黒花さんが今もグラウンドで練習しているって所。
この時間帯は練習する人なんてほとんどいません。いたとしてもキャプテンや剣城くんのような元サッカー経験者の方々。
少なくとも黒花さんがこの時間も練習している所なんて見た事がありません。
どこでどう情報を手に入れたのかは分かりませんが、彼女が
………まぁ、そう言う時もあるのでしょうが。
「きっ……キミ達っ……！」
思わず思考を巡らせていたら、また新たな声が乱入する。
その瞬間、3人の女生徒達が色めき出した。
無理もないでしょう。
あの御三方が求めていた御本人様の御登場ですから。
「A様っ！」
「あぁ！やはりいらっしゃったのですね、A様…！」
「ハァ……ハァ……き、キミ達、ね……き、急に、来られても……困るよ………ゴホッ……」
「お疲れですか？こちら、タオルです！どうぞ…！」
黒花さんが駆け寄って来ると3人は一斉に彼女を囲み、おばちゃんと話していた時より高いトーンのやけに甘ったるい声を出す。
その変わりように遠目から思わず顔を顰めてしまった。
しかも予め用意していたのか、タオルや飲み物まで……
……それにしても黒花さん、酷く疲れている様子ですが……まさか、本当に練習を？
でもジャージ姿なんですよね……
わざわざ着替えて来たんでしょうか？
「わ、私……練習、してるから……来ちゃダメ、って……言った、よね……？」
「申し訳ありません……どうしてもA様の記事を書きたくて……」
「えっ？あぁ……そう、言えば……キミ達、新聞部の子達……か……」
「…！ 覚えていらっしゃったんですか？！」
「あ、あぁ、うん……
とりあえず、その…取材？はあっちでしよう。
出来る限り答えるから……」
「ほ、本当ですか？！で、ではすぐに！」
息を整えながら彼女達に応答し、彼女はそう言って宿舎とは反対側へと誘導する。
去り際におばちゃんにペコペコ謝ってから行ってしまい、僕は思わず呆れの溜息を吐いてしまいました。
……大変ですね、彼女は。
練習している最中にもああやって来られて。
あまり好かない相手とはいえ、同情はしてしまう。学校でもあんな感じで終始人に取り囲まれていたんでしょう。
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