特別なのです ページ16
「どうしました、A?」
「何か見つけたの?」
何故だか目が離せなくて、暫く私はお店の前で立ち尽くしていたら、先を歩いていた陣くん達が戻って来て私と一緒にショーウィンドウを覗き込んだ。
「あのクラゲのやつ、素敵じゃないですか?」
「クラゲ?」
「……何だアレ?」
「スノードームだね」
「気になるのですか?」
「はい、とても」
私が止まったのを見て御三方も足を止め、私と一緒にショーウィンドウを見遣る。
クラゲのスノードームを指差しながら素直な感想を述べると「じゃあ入ってみようか」と皆帆くんが言うので、私達はその雑貨屋へと入って行きました。
中は見た目通りのこじんまりとした内装で、店員さんも1人だけ。ごちゃっとしててちょっと古臭い印象を受けました。
でも並んでいる商品は実に様々。
年代物っぽい陶器から、最近まで流行っていた衣服まで、本当に色々売っておりました。
それらが種類によって分けられずに、雑多に棚に並べられておりました。
「此処は……雑貨屋と言うよりはリサイクルショップみたいですね」
「ゴチャゴチャしてて何処に何があんのか……」
中に入ってすぐ私は件のスノードームの元に歩み寄る。
ショーウィンドウ前に飾られていたクラゲのスノードーム。
手に取って試しにひっくり返してから元に戻すと、中のラメが上からクラゲに降り注ぐ。
キラキラと輝くソレはまるで海の中の光景を閉じ込めたようで。
思わず魅入っていると、ふとドームの向こう側に皆帆くんの顔が映りこんだ。
「さっきAが見ていたのはコレかい?」
「はいなのです」
「綺麗ですね。それにクラゲじゃないですか」
「…?お前、クラゲ好きだっけ?」
「好きと言うより……私の中ではちょっと特別ってだけなのです」
クラゲを見て思い出すのは、水族館で迷子になったお父さんの姿。
私が見つけた時、お父さんはクラゲの水槽の前でボーッと水槽を眺めておりました。
ただそれだけの事なのに、何故か妙に覚えてしまっているんですよね。
そんな思い出が不思議と私の中では特別なのです。
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