どっち派なのです ページ13
その後、皆帆くんを先導にして辿り着いたのは古本屋。お目当ては前来た時に見掛けて気になっていた古い推理小説らしかったのです。
こういう所はあまり入らないので、通い慣れた場所であるはずだったのに、そのお店の中はまるで別世界のようでした。
天井に届きそうな程の本棚が並び、そこに収められた本達。如何にも古めかしい物もあれば、比較的最近の漫画等がある程度、本棚ごとに分類されていました。
まぁ、中には場違いな本もありましたけど。
参考書の中に漫画とか、文豪作品の中にラノベ系小説とか。店主さんはお年を召していましたし、お客さんが適当に戻してそのままなのでしょう。
「本のにおいがします」
「本屋だからな」
「やっぱり紙の本はいいよね。
電子書籍も利用してるけれど、読んでるって実感が中々湧かないんだ。気付いたら読み終わっちゃってる」
「紙媒体だと嵩張るから僕はあまり好ましくないです。利便性を考えれば圧倒的に電子書籍でしょう」
「真名部くんは分かってないなぁ。
紙ならではの厚み、重さがあるから良いんだよ。
それに読んでる時の進捗も何となく分かって、その度に一喜一憂できるんだよ。『ああ、まだ半分も読んでないんだな』『もう少しで読み終わっちゃうな』って」
「…?そんなの、ページ数を見れば一目瞭然じゃないですか」
「…………」
「瞬木くんはどちら派ですか?」
「どうでもいい派」
そんな話をしながら、皆帆くんと一緒にお目当ての本を探す。
前に来た時に場所を覚えていたのか案外すぐに見つかり、皆帆くんは「買って来るね」と言ってレジの方へ向かった。
残された私達3人はとりあえず店内で待つ事に。
適当に本のカバーを眺めながら店内をうろついていたのですが、ふと目に付いた漫画を本棚から引き抜いて開いてみる。
内容は恋愛漫画。
年上の先輩を好きになった女の子が恋を成就させる為に奮闘する。まぁ、よくある王道恋愛漫画でした。
少し前まではこういったものはあまり興味がなく、そこまで真剣に読んだ事はなかったのですが……今なら分かります。この女の子の気持ちが。
好きな人といるとドキドキするし、手を繋ぎたいし、くっつきたい。
その人の一挙一動が愛おしくて、とにかく会えない時間が寂しくて堪らない。
はぁ……不動さん、今なにしてるんでしょう。
あとでこっそり連絡してみたいですね。
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