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「……ごめん、ラキオ。俺、行けない」
自分の気持ちを押し殺し、俺は首を横に振った。
そうしたらラキオは一瞬だけ、目を丸く見張る。予想外、とでも言いたそうな顔だった。
そうして「…フンッ」とそっぽを向くと眉を顰め、横目で忌々しそうに俺を睨んだ。
「………………あ、そう。折角、この優秀な頭脳を持つこの僕の役に立てたと言うのにね。チャンスはもうあげないよ?」
「……うん、ごめんね。
でも、ありがとう」
「……?」
いつも通りの上から目線。
でもいつもより勢いを感じなかったのは気のせいだろうか。
ループの事を考えたら、もどかしくて、寂しくて。でも言った所でラキオを困らせるだけだから、当たり障りのない事しか返せなかった。
言葉が足りなかったのか、ラキオには不思議そうな顔されたけど。
「……因みに君はどこの星で降りるつもりなの?」
「……降りれるなら、故郷に帰ろうかなって。
ほら、俺兄妹いるから……」
「…?そうだったの?初耳だけど?」
「あ……そっか。知らないんだっけ。
うん、兄妹いるんだ。だから、帰らなきゃ」
「……その兄妹とやらも連れて来てもいいと言ったら?」
「えっ」
話している内に懐かしく、自然と下がる視線を思わず上げる。
だがラキオは対称的に視線を落として「いや……」と目を伏せると、溜息混じりに続けた。
「今のは聞かなかった事にしてくれ。何も君を困らせようってワケじゃないンだ。
ただ、どうしても……」
そっと目だけで俺を見遣るラキオ。
海のような綺麗な瞳は何を考えているんだろう?アンニュイな表情も相まって、分からない。
その内「なンでもない」と顔を上げ、いつもの憎たらしい笑みを浮かべた。
「ま、勿体ない事をしたね君も。世紀の瞬間を目撃できたかもしれないのに。
じゃあ、僕はこれで。
明日の昼頃には着くらしいから、風邪治ったンなら機材運びヨロシクね」
「って、最後の最後までパシらせるつもりかよ!」
最後にそう言い捨てて、ラキオは行ってしまった。
クッソ……何で病み上がりに仕事させようとするんだよ……やるケドさ。
……それにしても、ラキオと一緒に船降りる、かぁ……
それってなんかちょっと面白そう。
兄妹も一緒でいいなら、付いてってもいいかもな。
今更、世話しなきゃいけない人が1人増えた所で変わらないし。
ループ終わったら、そうしてみようかな。
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*IJu*(プロフ) - ハムエッグさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けているようで嬉しいです(ㅅ´꒳` )これからも更新がんばります〜! (2月7日 0時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
ハムエッグ(プロフ) - この作品好きすぎて一気見しちゃいました.....!! (2月6日 16時) (レス) @page26 id: e9b251311b (このIDを非表示/違反報告)
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