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「ごめんね、SQ。セツと先に約束してたんだ」
「…!」
「そかそか〜、ザンネン。んじゃまた今度NE!」
Aがそう言うと案外、簡単にSQは引き下がり、そのまま来た道を引き返して行った。
そうして残された私は終始目を白黒させていたと思う。頭が追い付かなくて、呆然とAを見つめていたら、Aにクスッと笑われてしまった。
「ど……どうして……?」
「ん?だって私、セツとお話したかったんだもん」
まだ整理し切れなくて。色んな疑問を1つにして、ようやく口から零した。
そうしたらAは悪戯っ子のように笑ってそう言った。私の胸がまた高鳴った。
おもむろに、腕を掴んでいた私の手がAの手によって下ろされる。そうして優しく握られると、Aはほんのり頬を染めた。
トクトクと、心臓の鼓動が早くなる。
私はAの手を握り返すと、Aは照れくさそうに笑った。
「……えへへ、何だかセツとこうやって話すの、久しぶりだね」
「う、うん…そう、だね。最近は……A、他の乗員と仲が良いから……」
「うん、頑張ってるんだ。セツも頑張ってくれているから」
「そんな…!Aはいつも頑張っているよ!寧ろ、頑張り過ぎてる所も…」
「それはセツもだよ。セツは私が困ってるといつも助けてくれるもの」
久方振りの、彼女との会話。
特に何でもない話なのに、どうしてこうも心が弾むのだろう。
心地好い彼女の声を聞き、ふわっと体が軽くなったようにも思えた。きゅっ、と彼女の手を握ると彼女も握り返して来て、頬を染めてはにかんだ。
「…ね、セツ。この後、暇?」
「えっ?…うん、暇だよ」
「じゃあ私の部屋でお話しようよ?
最近話してなかったから、セツのお話聞きたいな」
思ってもみない提案に私の胸が一層高鳴る。
あまりにも嬉しくて、握り締める手に力が入ってしまい、Aに「いたい」と苦笑いされてしまった。
慌てて手を離そうとしたけれど、Aがそれを許さなかった。指を絡め、深く繋ぎ止めて、そっと顔を上げる。
ユラユラと揺れる濡れた瞳は、仄かな熱を秘めていた。
「……うん。じ、じゃあ、行こっか……」
「うん、行こ!」
私はゆっくり頷くと、Aは弾んだ声でそう言って、私の手を引き部屋へと向かった。
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*IJu*(プロフ) - ハムエッグさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けているようで嬉しいです(ㅅ´꒳` )これからも更新がんばります〜! (2月7日 0時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
ハムエッグ(プロフ) - この作品好きすぎて一気見しちゃいました.....!! (2月6日 16時) (レス) @page26 id: e9b251311b (このIDを非表示/違反報告)
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