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譲れない日【セツ】 ページ15

最近、Aと接していない。

別に避けてるとか避けられてるとか、そういうのではない。単純にタイミングが悪いのだ。


この所、Aはよく乗員と積極的に絡んでいる所を見掛ける。きっと彼女なりに乗員の情報を集めているのだろう。とても良い事だ。

とても良い事、なのだが……どうしてだろう。
最近、彼女が誰かといる所を見掛けると、胸の奥が痛むんだ。


まるで針で刺されたかのように。
チクリチクリと痛むんだ。

そして、どうしてか焦心してしまうんだ。
何が起こるワケでもないのに、どうしようもなく落ち着かなくなって、思わず声を掛けてしまいそうになる。


勿論、実際にした事はないけれど……いつかしてしまいそうで。

どうしてこうも焦ってしまうのだろう?
彼女に負けじと情報を集めねば、と無意識の内に考えてしまっているから?少しでも彼女の役に立ちたいから?早くループを終わらせたいから?


……分からない。
分からないけれど、抑えなければ。

こんな事でAを困らせたくはないし……
何より、今はそれどころじゃない。
彼女に恩を返す為にも、私も私で情報を集める事に集中しなければ。


…………集中、しなければ…………



−−−



調べ物を終え、部屋に戻ろうと通路を歩いていると、向こうから歩いて来るAを見掛けた。

しかも珍しく、1人だった。
何故か胸が高鳴った。


別に話さなきゃいけない事もなければ、話したい事も特にないくせに。どうしても、彼女の声を聞きたくて。

私は少し足を早めて、その名を呼ぼうと口を開く。



「あ、いたいた!Aっち〜〜!!」



……が、私が声を掛けるよりも前にAの後ろからSQが駆け寄って来るのが見えた。

当然、Aは呼ばれた方に振り返る。
ズキリ、と今までで1番胸が痛んだ。


あぁ、どうしよう。止められない。
彼女に向けた足が、止められない。

楽しそうに会話する彼女を見ていたら、居ても立ってもいられなくて。


どうしても。今日だけは、どうしても。

彼女を、譲りたくなくて。

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*IJu*(プロフ) - ハムエッグさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けているようで嬉しいです(ㅅ´꒳` )これからも更新がんばります〜! (2月7日 0時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
ハムエッグ(プロフ) - この作品好きすぎて一気見しちゃいました.....!! (2月6日 16時) (レス) @page26 id: e9b251311b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:*IJu* | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2023年12月17日 0時

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