【イナギャラ】多情ムジョウ異常4【皆帆和人】 (ページ5)

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フアンページ5

気にしてない、と言えば皆帆にとっては嘘になるが「ううん」「気にしてないよ」と答えると、幾分か彼女の表情が明るくなった。

「それで……取材、受ける事にしたの？」

「え、えぇ……何度断ってもしつこかったから、つい……

はぁ、放課後はお手紙を書く練習をしたかったのに……」

Aはまた1つ溜息を吐いて頬に手を添える。

彼女にとって取材は不本意なようだ。

ただ1つ、皆帆は気になる事があった。

それは彼女がどこまで(・・・・)話すかだ。

Aの恋愛観は少し……いや、かなり周りとはズレている。
一般的なソレとは違い、ハッキリ言えば異常だ。

しかし厄介な事に彼女はその事を自覚していない(・・・・・・・)。
異常を異常とまるで思っていないのだ。

現に彼女はそのせいで数人の男子生徒を不登校に追い詰め、今は瞬木くんにぞっこんだ。
その事を馬鹿正直に言おうものなら、それは別の意味で新聞部にとっては恰好のネタになるだろう。

「(普段は抑えているとはいえ、ふとした瞬間にタガが外れるのはまだ変わっていない……今回の取材はきっとその事(・・・)について話すだろうし……そうなったら、いつ暴走してしまうか……)」

Aは普段は顔には出さないが、でも好きな人の顔を思い浮かべると暴走してしまう。

その豹変ぶりは皆帆でもまだたまにギョッとするほどだ。
彼女の事情を知らぬ者が見たらどう思うだろう？

確かに彼女は異常だ。
不登校になってしまった隼総や湾田や他の被害者達の為にも、彼女の問題は早急に解決しなくてはならない、と皆帆は思う。

しかし、だからと言って公開処刑じみた事になってしまうのを皆帆は望んでいない。
彼女はまだ何が悪くて、何が異常なのか分かっていないのだから。

「…………その取材って、僕も参加する事は出来るかな？」

「えっ？」

予想もしていなかった皆帆の提案にAは目を丸く見張る。

この時、皆帆は不安で仕方なかった。
彼女が1人で取材を受けた場合の結末が。

Aは関わらなければまさに『高嶺の花』
春梨財閥のその名に恥じぬ優美な出で立ち、振る舞いに誰もが思わず溜息を漏らしてしまうだろう。

しかし、その胸の奥ではグツグツと煮え滾る鍋のように、酷く歪んだ盲愛を抱え、思いの丈を本人に押し付けている。