【イナギャラ】多情ムジョウ異常4【皆帆和人】 (ページ1)

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イガイナイチメンページ1

最初より随分と息がしやすい空気になった。

神童の意外な一面も見れた所で、神童がふと「そう言えば、」とAの方を見遣りながら言葉を続けた。

「A、この店に入る前に窓から見えたんだが……何か書いていたな。一体、何を書いていたんだ？」

「へっ？！」

どうやら神童は入店する前、Aの姿を窓越しに見ていた様だった。神童の疑問にAは席から立ち上がる勢いで体を震わせ、拍子抜けした声を上げる。

ブワッと赤くなる頬。Aは目を泳がせ「えーっと、えーっと」とアワアワしながら、おもむろに皆帆を見遣る。

その目は明らかに「助けて」と言っていた。
予想通りの反応に皆帆は思わずふ、と笑うと助け舟を出してやった。

「勉強してたんだ。ほら、春梨さんって一応受験生でしょ？それで基礎から復習したいって言ってね。僕はまだ1年だから、知ってる範囲を教えてたんだ。
で、僕もこの先習う範囲を春梨さんに教えて貰ってたんだ。ね、春梨さん」

「う、うん…！うん！」

「あぁ…なるほど」

皆帆の適当な話を神童は納得してくれたようで「それなら言ってくれれば」と苦笑する。

だがAは神童に嘘を吐いた罪悪感か、未だに目が泳ぎ続けていた。表情もやや強ばっていて、事情を知っている皆帆から見たらこの上なく分かりやすい表情だった。

－－－

それから暫くは滞りもなく、他愛のない話が続いた。

最初こそ動揺でお互いぎこちなかった神童と皆帆だが、すぐ以前のように話せるようになり、Aも終始楽しそうだった。

Aと神童は皆帆から見てもやはり仲が良さそうに見えた。お互いに婚約する気はない、なんて聞いていたから、てっきりもう少し冷めた関係かと思ったがそんな事はなく。
友人として見れば、とても理想的な関係だった。

特に皆帆が驚いたのは、自分が知らなかった神童の一面をAの前では出していた事だ。

神童はAの前ではよく笑い、しかもからかう様な事も度々口にしていた。皆帆の知っている神童は少なくとも人をからかう様な人間ではなかったので、これには驚いた。

Aも神童の前では飾らず自然体で接しているようで、学校では見せない年相応の子供っぽい一面や、腹を抱えて笑う場面なんてあった。

本当にこの2人は昔から仲が良かったんだろう。

ただ、その仲の良さによって、自分達の意志と関係無しに婚約関係を結ばれたんだろうと思うと、少し複雑だった。