【イナイレ】割れた花瓶に花を (ページ31)

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分けてあげるページ31

「大丈夫だ！壁山なら絶対できる！俺はそう信じてるからな！」

「出た、円堂のその根拠の無い期待」

「だって壁山もあんなに特訓頑張ったんだぞ！
出来ないワケがないって！」

「……ま、確かによく頑張ってると思うわ。
高い所、苦手なのに。克服しようって気概は感じるもの」

「だろ？」

Aの発言に円堂はどこか得意気に答える。
その眼に曇りは無く、心の底から壁山を信じているとひと目で分かった。

何故、そこまでして信じられるのか。
Aには不思議だった。

そんな彼を見ていると、不思議と『壁山なら出来るんじゃないか』と心の隅で自分も期待してしまっているのも、不思議で堪らなかった。

「おっ、特訓再開するのか？」

「…ああ」

「まだやるの？そろそろ帰った方がいいんじゃない？」

ふと立ち上がった豪炎寺。
しかし帰るのではなく、まだ特訓をする気らしい。

Aはそんな豪炎寺に空を指し示す。
空はもう夜の帳が降り始め、鉄塔付近の街頭はもう明かりが灯っていた。

「いや……あともう少しだけ」

「でも確かに暗くなったら危ないよな〜……
Aは早く帰った方がいいんじゃないか？」

「あ、アンタねぇ……フツーそこは『送っていくよ』って言うところじゃない？？」

「だって俺、豪炎寺の特訓に付き合うから……」

「私より特訓かい！……いや、別にいいケド」

相変わらずの様子にAは呆れて溜め息を漏らす。
別に送って欲しいってわけではなかったが、こうもハッキリ言われるとモヤモヤとしてしまう。

そんなモヤモヤを前髪ごと掻き上げると、ふとAは何かを思い出して、おもむろに岡持ちの扉を開いた。

「そーいや、さっきお菓子買って来たんだけど……アンタ達、いる？」

「えっ？いいのか？」

「本当はあとで独り占めしようとしてたんだけど……特別に分けてあげるわ」

そう言いながら取り出したのは1枚の板チョコだった。

ソレを銀紙ごと3等分に割って、それぞれ1枚ずつ配ると円堂は嬉しそうに、豪炎寺は拍子抜けた顔をしながらも受け取った。

「サンキュー、A！」

「……ありがとう」

「泣け無しのバイト代で買ったんだから、ありがた〜く頂くのよ」

「そう言われると食いづらいな……」

「遠慮はしなくていいわ。悪いのは全部あの守銭奴クソジジイだからね」

そう言いながら彼女は自分の分のチョコを齧る。

そんな彼女に苦笑いを浮かべながら、円堂と豪炎寺も口にした。