▲リボンが339こ▼ ページ48
真名部が眠りに落ちると、Aは真名部のお腹を撫でていた手の動きを止める。
そっと真名部の顔を覗き込み、じっと見つめる。
つん、と頬をつついてみれば彼は擽ったそうに微かに肩を竦めたが、起きる気配はなかった。
もう何度か彼の頬をつついても、反応は同じ。
ソレを確認してからAは物音を立てないようそっと立ち上がると、足音立てずに窓の方に向かった。
外はやや曇っていた。
青空より雲の割合の方が多く、先程から太陽が見え隠れしている。
そのせいで部屋の中に日差しが入って明るくなったり、暗くなったり。
まるで自分の心のように思えた。
「……」
Aはじっと窓の外を眺める。
外は特に変わり映えのない住宅地だ。
窓の粘着テープはまだどうにもしていないので、視界は悪いが、特に変わった様子はない。
……そのはずなのだが、彼女には何か別のモノが見えているのだろうか。
じっと一点だけ見つめて、彼女は眉を顰める。
何かを睨んでいるようなその瞳をきっと真名部はまだ見た事がないだろう。
おもむろに、彼女の手がカーテンに伸びる。
むんず、と掴んで最後に彼女は目を細めると
乱暴にカーテンを閉め、遮断した。
外の光が閉ざされ、薄暗くなったリビング。
そのタイミングで雲に隠れていた太陽が頭を出し、僅かな隙間からその日差しが部屋の中に侵入する。
「……大っ嫌い」
ふと、彼女は呟く。
真名部の寝息しか聞こえない静かな部屋ではよく響き
しかし誰も彼女の言葉は聞いていない。
「だから警察は大っ嫌い」
まだ握り締められていたカーテンの裾が、ぎゅう、と強く握られる。
低く唸るような怒りを含んだ声。
しかし、その肩は震えていた。
ｶﾀｶﾀと小さく震えていた。
「…………どうしよう」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 29人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
