リボンの檻 7 【真名部陣一郎】 (ページ45)

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△リボンが336こ▽ ページ45

とはいえ、だからと言って彼女に正直に打ち明けるのは気が引けた。
彼女には何の心配もせず、いつも通り自由に過ごして欲しいと思っているからだ。

警察の事も世間の目も気にせず
彼女らしく過ごして欲しくて。

それにもし、今自分達が警察に狙われていると知ったら彼女はどう思うだろう？

自分達は指名手配されていて、警察が探し回っていると知ったら、彼女はどう思うだろう？

最悪、彼女は警察の人間を片っ端から殺しかねない。
だって自分達の邪魔をする人間なんだから。
瞬木の時のように、容赦無くフライパンで殴ってしまうかもしれない。

そうでなくても彼女は警察という存在が嫌いなのだ。
デパートの時の様に、声を掛けた人間を警察と見なし、攻撃するかもしれない。

彼女にはもうこれ以上、手を汚して欲しくなかった。

だから真名部は精一杯の笑顔を浮かべると
何とか誤魔化そうと頭の中で考えながら、言葉を紡いだ。

「す…すみません。実は最近、あんまりよく眠れていなくって……そのせいでぼーっとしてしまったんだと思います」

「……怖い顔してたのはなんで？」

「多分、イライラしてたんだと思います。
ほら、眠いのに眠れないとイライラしませんか？」

「…私、眠い時は寝るからわかんない」

「そ…そうですか……」

「それに！イライラしてるんじゃなくて怖い顔(・・・)してたの！まなべがそんな顔する事なんてなかったのに！まなべ、帰って来てからそうだよ！」

しかし彼女は普段の真名部をよく見ていたようで
四つん這いで尚も近寄り、真名部はその度に後ろへ後退った。

しかし、不意に真名部の背中に壁が触れた。
部屋の端っこに追い詰められたのだ。

それでもAは変わらず真名部に近寄り、とうとう真名部の顔の横に手をついた。

逃げ場を失った真名部はただ黙って彼女を見上げる。
Aの濁った目は真名部を捉え、返答を待っているのか黙り込む。

彼女に囲われた状態で、真名部は小さく縮こまる。
どう言い訳しようか冷や汗を流しながら必死に考えていたが、ふと真名部は自分の顔の横についた彼女の腕が微かに震えている事に気付いた。