△リボンが326こ▽ ページ35
「…まなべのパパとママ、優しいんだね」
「……優しいんじゃなくて、甘いんだと思います」
「なにがちがうの?」
「…鞭があるか無いか、かと」
「ムチ…?ムチってなぁに?」
「鞭というのは武器の…いえ、なんでもないです」
話している内に説明するのが面倒になって、真名部は適当に話を切り上げた。
当然、知りたがりな彼女は「えー」と声を上げるが
質問攻めされる前に、今度は真名部が尋ねた。
「…因みに、Aさんのご両親についてお尋ねしても?」
「へっ…?私のパパとママ?」
「はい、そうです。…無理に、とは言いませんが」
「いいよぉ〜!あのね〜、パパはとっても優しくて〜、ママもすっごく優しくて〜!それでね〜…」
彼女の両親については色々と複雑そうなので流石に話してはくれないかと思ったが、意外にも彼女は自分から色々と話してくれた
父は家族を連れて色んな所に連れて行ってくれた事。
母は父がいる時は家庭的で、料理が美味しかった事。
父は母に適わない事。
母は今も昔も怒ると怖い事。
話している間の彼女の声音はとても楽しそうだった。
時々懐かしむような声をする時もあり、その頃は本当に幸せだったんだな、と真名部は少しだけ救われたような気持ちになった。
「特にいっちばん怖かったのはね〜…
私が窓からお外に飛び出した日かなぁ」
話している内に目が覚めて来たのだろうか。
先程までは眠そうな声だったのに、もうすっかりいつもの調子で更に話を続ける。
真名部としては彼女にはゆっくり休んで貰いたいが
その一方で、楽しそうな彼女を止める事も出来ず
真名部はただ黙って彼女の話に耳を傾けた。
「パパが死んでからずーーっと家から出ちゃダメたってママに言われてたんだけどね〜……
ある日、こっそりママに秘密で出た事があるんだ」
「…どうして?」
「んっとねぇ…ママと一緒にいるのがイヤになったの!」
「…」
「窓からお外に出て〜、とにかく遠くに行って〜、警察さんがいる所まで行ったの!」
「警察……?」
おそらく彼女が言っているのは交番だろう。
幼いながらに彼女は警官に助けを求めに行ったんだろうか。
嫌な予感がした。
この先の話は聞いていてあまりいい話ではなさそうだった。
似たような感覚を何回か経験しているからこそ、真名部はわかった。
でも真名部には止める事が出来なかった。
真名部自身が知りたいのもあったが
彼女自身もまた、話したがっていたのだから。
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