リボンの檻 7 【真名部陣一郎】 (ページ25)

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△リボンが316こ▽ ページ25

「知ってる？夢の中だとね、あったかいとか冷たいとかがわかんないんだよ？だって夢だから！
でも夢じゃなかったら、あったかいとか冷たいがわかるようになるの！

……ねぇ、まなべ。私の手、あったかい？」

無邪気な微笑みを浮かべながら、しっかりと真名部の頬に触れるA。

その手は心地好いあたたかさがあり、真名部は目を丸く見張る。
じわじわと何かが溶かされて行くように、比例するように真名部の表情も解けていく。

「……普通、こういうのって頬を抓るんじゃないんですかね」

言いながら真名部は彼女の手に頬擦りをする。

あたたかい。確かに人の体温を感じる、
Aの話が本当ならば、これは現実だ。夢じゃない。

夢じゃ、ない。

それだけで、真名部は心の底から安心してしまった。

「…？まなべ、どうして泣いてるの？」

「…えっ…」

…どうやら安心し過ぎてしまったらしい。

気付いたら真名部の頬に涙が伝い、真名部は思わず顔を上げる。

1度彼女から離れ、メガネを取って自分の腕で拭う。

まさか彼女の前でまた泣いてしまうなんて。
少し恥ずかしくて彼女から目をそらすが
対して彼女の視線はずっと真名部の方に向いていた。

「すっ…すみません。目にゴミが、入っていたみたいで……」

「大丈夫…？取ったげよっか？」

「い、いいえ！いいえ、大丈夫です…！
も、もう取りました、取りましたから…！」

急に涙を流した真名部を心配しているのだろう。

真名部が適当に誤魔化そうとしたが、彼女は純粋に信じておもむろにソファから立ち上がる。
慌てて真名部が止めると、彼女はその場で留まったが
その表情はまだ心配そうで、じっと真名部の顔を覗き込んでいた。

「…ホントに？」

「えぇ、本当です」

「ウソじゃない？」

「う…嘘じゃないですよ。
それより、まだ髪の毛拭いてる途中なの……デっ？！」

真名部は1度取ったメガネを拭い、再び掛け直しながらそう言った。

だが言葉の途中でメガネを掛け直すと
いつの間にか目の前にドアップのAの顔が映り
真名部の声が裏返って思わず1歩後退った。

「………本当？」

再び真名部の頬に、Aの手が添えられる。
その顔は尚も心配そうで、更に顔を近付けられる。

このままじゃ、キスしてしまいそうな近距離。
でも彼女の手が逃げる事を許さず、真名部は動く事も出来ずに顔を真っ赤にさせながら、言葉にならない言葉を口から絞り出していた。