リボンの檻 7 【真名部陣一郎】 (ページ19)

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△リボンが310こ▽ ページ19

「だって家族になったら、ずっとお家にいるんでしょ？つまり、ずっと一緒にいれるって事じゃない？

私、寂しいのもう嫌なの。だから、真名部と家族になって、もう寂しいの終わりにしたいの。
真名部がいいの。真名部じゃないと嫌なの」

まるで子供のような、単純で悲しい発想。
しかし表情はとてもふざけていると思えない。

おもむろに、彼女の手が動く。
弱々しくもきちんと真名部の服の袖を掴むと、指先できゅっと掴む。

まるで小さい子供に掴まれたように真名部は思えた。

「……ねぇ、真名部は私と同じ？
本当に私と同じ〝好き〟なの？
真名部も私と同じ気持ちなの？」

更に続ける彼女の瞳は、確かに真名部を見ているはずなのに。
何処か遠く、別のモノを見ているように見えた。

真名部は一瞬、答えるのを躊躇した。
息が詰まり、あんなにうるさく響いていた心臓が冷えていくのを覚え、一瞬だけ身体が強ばった。

……でも、それでも良かった。
彼女の傍にいられるのなら。

真名部は口元に笑みを浮かべて微笑むと
彼女の頭を優しく、優しく撫でてやった。

「…………えぇ、もちろん」

「…！」

その時の嬉しそうな彼女の顔が忘れられない。

最初に驚いた顔をして、それが見る見るうちに笑顔になっていく。
まるで彼女の心を覆い尽くしていたモノが溶けていくように見えた。

真名部の服の裾を掴んでいたAの手が1度離され、彼の手を掴む。
真名部がその手を握り返すと、Aは更に嬉しそうに笑って、毛布の中に顔を埋めた。

「嬉しい……嬉しい…っ！
真名部と同じ気持ちなんて、嬉しい！」

「…僕も嬉しいです、Aさん」

元気が有り余っていたなら、きっと今頃真名部に飛びついていただろう。
それぐらいに彼女は満面の笑みを浮かべながら、何度も何度も「嬉しい」を連呼する。

真名部はその幸せそうな彼女の顔を見て、自分も嬉しくなるような気がした。