△リボンが309こ▽ ページ18
「………僕は、」
自分の抱く気持ちに戸惑いながら、真名部は口を開く。
当然だ。目の前の少女が8人の人間を殺したと言うのに。そうして母親の死体の隣で寝ていたと言うのに。
この気持ちは何も変わらない。変わらなかった。
普通の人なら多少なりとも引いてしまっているだろうに。
人によっては拒絶する人もいるかもしれない。
だが真名部はソレされも無かった。
何も、何も変わらなかった。
真名部は今一度、彼女を見遣る。
こちらに背中を向けて縮こまるA。
その肩は微かに震えている気がした。
流石に否定的な言葉が吐き出されると思っているんだろうか。
『嫌い』と言われると思っているのだろうか。
真名部は続けた。
「……………好きじゃ、足りない、です」
「………？」
真名部の言葉に、彼女は一瞬身を固めた。
しかし、少ししてからそっと真名部の方を振り返り、彼女はキョトンとした顔をする。
対して真名部は視線を落とすと、たどたどしくも更に続けた。
「好き、だけじゃ……足りないです。
……大好き、でも足りないです。
つまり……だから、その………… い、してる……って、事なんだと……思い、ます……」
自分で言っていて、恥ずかしくて堪らない。
特に最後の方なんて、蚊が遠くで飛んでいるような声で、彼女に聞こえているかどうかなんてわからない。
でも真名部の率直な気持ちは精一杯、彼なりに伝えた。
それをどう捉えるかはA次第で、真名部は彼女の返答をドキドキしながら待ち続けた。
5秒、10秒、酷く静かな時間が過ぎる。
真名部は返事どころか声さえ聞こえなくなったのが気になって、そっと顔を上げると
真ん丸に見開かれた、黒曜石のような瞳と目が合った。
「…………じゃあ真名部は、私と同じ�犢イ��瓩覆痢�」
「あ…アナタは、僕の事…どういう風に……その、好き…なんですか？」
「家族になりたい」
今までで1番、真名部の心臓が跳ねた瞬間だったかもしれない。
その勢いで口から心臓が飛び出てしまうんじゃないかと思った。
あんまりにも驚き過ぎて、声さえも出なかった真名部に対し、Aは丸く目を見張ったまま、続けた。
「私、真名部と家族になりたい。
家族になって、真名部とずっと一緒にいたい」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 29人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
