リボンの檻 7 【真名部陣一郎】 (ページ15)

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▲リボンが306こ▼ ページ15

ママはね、あんまり眠れない人だった。いつも目の下真っ黒にして、昼間もいつもお昼寝してた人なの。
だからこんなに長く眠ってるなんて、ありえないと思った。

それにママに触ったらね、冷たかったの。
本当に、まるで氷みたいに冷たくて。
コレが本当にママだなんて思えなくて。

でも顔を見たら確かにママだから、私は混乱した。
目を見開いたままのママ。頭を真っ赤にしたママ。
そうしてあの時の手の感触を思い出して、私はやっと自分のした事を理解してしまった。

最初の3日はキッチンに行けなかった。
ママの死体もそのままにして、私はリビングの隅っこでずっとじっとしてた。

どうすればいいかわからなかったの。
だから無かった事にして、キッチンに行く事以外はいつも通り過ごしてた。

でも4日も経つと少しずつ慣れて来て
1週間頃にはもう死体を見ても何とも思わなくなった。

…ううん、思わなかったは嘘。
『臭いな』って思った。
だってママから変な臭いするんだもん。
チーズみたいな変な臭い。
香水よりもヒドイ臭い。

ゴミの臭いには慣れたけど、ママの臭いには慣れたくなくて。
私はママをママの部屋に運んで、ちゃんとベットに寝かせてあげたの。

顔もね、ちゃんと眠ってるようにしたの。
開いてた目を下ろしてね。
そうしたら何だかママが本当にただベットって寝てるように見えたの。
『ああ、何だ生きてるじゃん』って思ったの。

そこから……そこから私は、可笑しくなった。
いや、元々可笑しかったんだけれど、もっとずっと可笑しくなった。

ママはもう死んだはずなのに、ママがまるで生きているかのように生活するようになったの。

とは言ってもママはいないよ。
だってお出掛けしてるんだから。
私は家にお留守番してて、ママの帰りを待ってるの。

いつしか、そう考えるようになってしまってた。
ママを殺したのは私のはずなのに、本気でそう思って生活してた。

でもいくら私だけがそう思ってても、ママの周りはそうは思わない。
今まで定期的に会ってたはずなのに、突然連絡も来なくなったから、変だと思ったんだと思う。

最初はカズヒコパパだった。