△リボンが303こ▽ ページ12
再会を喜んだ後、真名部は急いで彼女をリビングまで運んだ。
運んだ、と言うより『引き摺る』の方が正しいのかもしれない。何せ真名部の筋力では彼女を抱き抱える事は出来ないのだから。
せいぜい、肩を貸して歩く補助をしてやれるぐらいだ。
彼女に肩を貸した時、その体の細さに驚いた。
華奢とかそんなレベルじゃない。
最早骨と皮しかないんじゃないかと思う程だった。
たった3日食べなかっただけでこうもガリガリに痩せてしまうのか。いいや、違う。
元々彼女は細かったのだ。
彼女は母親がいる時、まともに食事も取れなかった。
真名部が来てからようやくまともに食べられたが、それも数日だけ。
そんな食生活では肉が付くはずがない。
こんなゴボウのような体の人間が人を殺すなんて到底無理そうに見えるが、実際彼女はこの細腕で5人の人間をフライパン1つで殺してしまったのだから、不思議な話だ。
…なんて、何処か他人事のように考え
随分と衰弱した彼女を歩かせる事を心苦しく思いながらも、真名部はあの部屋から彼女を何とか連れ出して、リビングのソファに横たわらせた。
Aは案の定、真名部が出て行った日から何も食べていないようだった。
なので真名部はまず水分を摂らせてやると、Aは飲みづらそうにしながらも少しずつ、少しずつ飲み込んで、次第に呼吸が落ち着いていった。
食べ物も食べさせたかったが、何日も物を食べなかった人間が急に食べ物を食べると、体が驚いて吐いてしまうと聞いた事がある。
彼女をもう少し落ち着かせてから、食べやすいお粥を作ってやろうと真名部は考えた。
「だ…大丈夫、ですか?
お…お水、もっと飲みますか?」
「…ううん…だいじょうぶ」
「寒かったり、熱かったりしたら言って下さい!
お腹も空いてるなら、お粥とか……作りますので」
「ありがとう。でもだいじょうぶ」
「無理はなさらないで下さいね!
少しでも何かあれば遠慮なく……」
「ねぇ、真名部」
真名部が言い切る前に、Aが口を開いた。
何処か悲しそうに微笑みながら、真名部の方を見遣る。
その表情は前の無邪気な彼女とは違う雰囲気で、真名部はそんな彼女に名前を呼ばれて思わずドキリとしてしまう。
彼女は続けた。
「私の事、嫌いになった?」
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