【イナイレ】シッカーラプンツェル11【不動明王】 (ページ40)

今日:5 hit、昨日:1 hit、合計:10,939 hit

△狩人の受難ページ40

「待てって、黒井！」

入園して早々、人混みの中1人走り出そうとする彼女。
思わずその手を掴まえて声を掛けると、ようやく届いたのか黒井は振り返った。

入口とはいえ、人は多いし
向こうで何かしているのか、人集りも出来ている。

黒井は小さいから、こんな中で見失ったら探すのは大変そうだ。はしゃぐ気持ちはわかるが、あまり動き回られては困る。

「ど、どうしたの、トビタカ？早くしないと見逃しちゃうよ！」

「人が多いからあんまり離れちゃダメだ。
はぐれたら楽しめないし……嫌、だろ？」

「……あー……」

気が急(せ)いでウズウズしている様子の彼女に言い聞かせると、彼女は少し考えてから、納得したような顔をする。

途端にしゅんと視線を落とし、顔を上げて苦笑いを浮かべると「ごめんなさい」と素直に謝った。

「そうだね。はぐれたら大変だよね……ごめんなさい。
初めてだったから、はしゃいじゃって……」

「いや……わかってくれたなら良いんだ」

とりあえず、理解してくれたようで助かった。
いや、元々彼女は人の迷惑になるような我儘は言わないのだが。

彼女の返答に安堵し、胸を撫で下ろしたが
次の彼女の一言でその胸が大きく脈打った。

「じゃあじゃあ！こうやって手を繋いでれば、はぐれないよね？」

「っ……？！」

……意図せず咄嗟に掴んだ彼女の左手。
ソレを指し示しながら、黒井はさも名案だと言いたげに笑う。

た、確かに……手を繋いでいた方がよりはぐれないとは思うが……黒井はそれでいいんだろうか。

いや……こちらとしては……その、まぁ……嬉しい……けど。

「それよりトビタカ！早くあっちの行こーよ！」

「あ……あぁ……」

意識しまくりな俺に対して、黒井はそれ程なにも感じていないんだろう。

こんな事より向こうの演し物が気になって仕方ないらしく
黒井は俺の手を引っ張る。

俺は戸惑いつつもしっかり彼女の手を握り
彼女に引っ張られるがままに歩いて行った。

………とりあえず、第1関門はクリア、だな。