辻 743 ページ46
「…あぁ、アンタも？
じゃ、客室使いなよ。霧野くんの後に案内するから…」
「いいや、コイツと同じ部屋で寝る」
「………えっ？」
流石にザナークも疲れたのだろう。
休む発言については特に何も思わなかった。
しかし、その後の言葉に俺も瞬木も目を瞬かせる。
同じ部屋って……俺と？同じ部屋？
どうしてわざわざ？
瞬木が言うように客室用の部屋が一応あるのだから、そちらを使えばいいというのに。
「えーー！！おじさんも行っちゃうの？！」
「すこしはあそんでよ。みんないるのひさしぶりなんだから」
「おじっ……だァァァ！！お前ら俺様の周りをチョロチョロしてるんじゃねぇ！鬱陶しいんだよ！」
「じゃあ遊んでー！遊んでーー！！」
「ｯﾁｨ……喧しいガキだ……
……っ……」
「…？」
来て早々の退場に瞬と雄太はザナークの左右で「遊べ」と誘う。
ザナークはソレを鬱陶しそうに眺め、舌打ちをかますが
ほんの一瞬、その表情が別の意味で歪んだ気がした。
「こらこら、あんまり
「ホント…？やったー！それならいいよ！」
「まぁ、はやと兄ちゃんがいうなら……」
瞬木は我儘を言う2人に微笑みかけ、優しい口調で宥めてやった。
ただ、やけに『おじさん』と部分を強調していたような気がする。
ザナークの鋭い視線が向かうが、瞬木は気付かないふりをして瞬と雄太と手を繋ぐと、先導して俺達を部屋に案内してくれた。
−−−
「ザナーク、もしかして怪我でもしてるのか…？」
部屋を案内され、瞬木達と分かれると
俺は気になっていた事をそのままザナークに尋ねた。
最初は「別に」と答えたザナークだったが、直後にまた苦しそうに顔を歪める。
やはり彼は負傷していたようだった。
彼を俺のベットに誘導し、そこに寝かせる。
ザナークは不快そうな顔をしていたが、己の体調もあってか拒む事はなく、横になると1つ息を吐いた。
「怪我をしてるなら言ってくれれば良かったのに…」
「言ったら治してくれたのか？
…お前の能力のせいなのに」
「えっ……」
てっきりさっきエルドラドの少女の戦った時のものだと思っていたが、ザナークの一言に言葉を失う。
次の瞬間、脳裏に浮かんだのは
いつしかの自分の能力が勝手に発動されてしまい、目の前で苦しむ羽目になった倉間の姿だった。
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