辻 702 ページ5
「ある女…？」
ザナークの口から出て来た言葉に俺はオウム返しでたずねた。
するとヤツはまた笑う。
『待ってました』とでも言うように。
俺が尋ねるのを待っていたかのように。
「�爛ぅ疋薛瓩澄Ｋ槓�の、な」
「イドラ……？！」
久々に聞いたような気がする、彼女の名前。
しかも�猖槓��瓠帖�どういう事だ？
イドラには偽物がいるって事なのか？
俺は更に捲し立てると、ヤツは俺を小馬鹿にするよう宥めた後に言葉を続けた。
「そのままの意味だ。今からイドラを迎えに行く。
お前の時と同じようにな」
「それってつまり……また攫うってことか？」
「人聞きの悪い事言わないでくれ。
俺が『迎えに行く』って言うんだから『迎えに行く』んだよ」
「……」
……自分勝手なヤツだな。
俺の場合だって明らかに拉致だろうに。
しかしそんな事指摘してもコイツは全く聞く耳持たないのは、この短い時間の中でよくわかった。
それよりも気になる事があったので、俺はソレをそのままヤツに尋ねた。
「…でも、どっちのイドラを連れてくんだ？」
「『迎えに行く』」
「…迎えに行くんだ？」
「�猖槓��瓩世辰童世辰燭世蹐Α�
なら�猖槓��瓩離ぅ疋蕕坊茲泙辰謄鵑世蹇�
「その�猖槓��瓩�どっちだって話だ。
そもそも、どっちも本物だし……」
「……お前、あの女から何にも聞いちゃいないんだな」
ヤツが言うには�猖槓��瓩離ぅ疋蕕諒�に行くらしいが
俺には意味がわからなかった。
だって俺の知っているイドラも、未来から来たイドラも同じイドラだ。本物も偽物もない。
それとも、そもそも俺達の住んでいるこの時間軸がパラレルワールドだったりするのだろうか……
俺の問いに先程のムカつく笑みとは一変し
ザナークは憐れむような視線を送る。
溜息さえ吐かれるぐらいにそれは盛大に憐れまれた。
そうしてヤツは踵を返す。
どうやら茂みの奥に行きたいらしかった。
「答えてくれないのか？」と尋ねると
ヤツはこちらを振り返り「お前の返答次第だ」と返された。
「お前が俺に大人しくついて来るって言うなら、答えてやろう。
だが、ついて来ないってンならこの話はもう終わりだ。お下げ振ってオウチ帰りな」
「…………」
……コイツはどうやら底意地も悪いらしい。
俺はおもむろに立ち上がり、答える代わりに睨みつけると、ヤツはまたニタリと笑って、茂みの奥へと入って行った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 37人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
