世界征服～僕らのサーカス～【イナGO】VS SSC編第陸幕 (ページ37)

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イドラのサーカス 734 ページ37

「お前、あの場に居たよな？
なら出来ただろ。俺の能力を破壊(け)す事だって。

オマケに俺の〝身体の影〟まで……」

「……〝身体の影〟？
それって、もしかして……」

ふと、ずっとふざけもせず黙っていたAが口を開く。

おもむろに黒い右手が持ち上げられ
その指先が、瞬木の首に触れた。

瞬木は思わず身を固める。
彼女から目をそらさずにいると、彼女は瞬木の首を親指の腹で撫で、そうして〝彼の首に纏わりついているモノ〟に触れた。

「…………コレの事？」

瞬間、瞬木の身体がｶﾞｸﾝと崩れた。
まるで糸が切れた人形のようにその場に倒れ、瞬木は目を大きく見開く。

すぐ立ち上がろうと手をつくが、力が入らない。
否、入れているがそれでは足りない(・・・・・・・・・・・・・・)。

瞬木は地面に伏せたまま首だけ上げて、目の前の悪魔を見遣る。

瞬木には彼女が薄く笑っているように見えた。

「あぁ、こっち(・・・)の瞬木も力無いんだね。
まるで産まれたての子鹿ちゃんみたいだよ」

おもむろにAは瞬木の目の前でしゃがみこみ、尚も笑みを浮かべたまま、そんな事を口にする。

瞬木は立ち上がろうとしてみたが、やはりダメだった。
きっと彼女の能力で破壊(け)されているんだろう。
自身の能力を。

瞬木は実は力がとても弱い。
どれぐらいかと言うと、自分1人の足で自分の体重を支えきれないくらいだ。

勿論、物を持つ事さえ不可能で、食器すらも持てない。
そんな身体だから歩く事は当然無理だし、立つ事も座る事も不可能なのだ。

そんな彼が今までどうやって普通に過ごしていたのかと言うと、彼の能力が関係している。

瞬木は自身の能力で〝影〟を身体に纏い、ソレで身体を支えていたのだ。

とはいえ、この事を知っているのは瞬木の弟達である瞬と雄太のみで、他には秘密だ。
団員はおろかAにさえ話した事はない。

話した事は、ないはずなのだが。

「っ……なんで、知ってる……？」

「そりゃあ、そうだよ。だって僕は団長だよ？
団員の事はなんだって知っているのさ」

「そ、れにっ……こっち(・・・)って……なんだ？
その言い方だと……未来から来た、っつーより……」

「………………へぇ、」

瞬木が下から睨み付けながら追及すると、彼女の目尻が僅かに上がった。