辻 729 ページ32
「……そうだね。まずは真名部達を寝かせてあげないと。僕達も頭の整理がしたいしね」
頭を抱えていたイドラは俺の発言にふと顔を上げる。
とは言え、この辺で休めそうな場所なんてフィフスセクターぐらいしか思い付かない。
しかし…反転世界というのだから、もしかしたらこちらの世界ではフィフスセクターとはまだ敵対しているのかもしれないな……
そうだとしたら、わざわざ敵地に行くようなものだよな。気軽に行けそうにはない。
だとすると、この辺で休めそうな場所なんて……
「……なら、館に行くか？」
「館…？それって
「まぁ、そんな所」
「でも大丈夫なのか…？敵に場所を知られてたり…」
「さぁな。ただ、定期的に戻って弟達の様子見てるけど、特に変わった所とかはないからさ。
ま、襲われたらその時はその時かな」
瞬木はそう言って、ニコリと笑う。
俺の知ってる瞬木とは違う、違和感しかないその笑みに俺の不安は更に膨らんだ。
とは言え、今の所はそこしかないだろう……
イドラもザナークも特に反論する事もなく、早速館へと向かう事になった。
「あー…皆、運ばなきゃだよね」
……の、だが。
ふと、視線が倒れた3人に落とされた。
まだ意識が戻りそうにない3人だ。
つまり、彼等を運びつつ館に向かわなくてはならないと言う事だ。
此処から館までは随分と距離が離れていて、馬車でも数時間は掛かる。
人を運びながら徒歩で行くと考えると、下手したら丸1日掛かってしまうかもしれない。
「言っとくが、俺様は運ばないからな」
「ちょっとー、助けに来たなら少しくらい手伝ってよね」
「別に助けに来たワケじゃねぇ。俺様は違う世界のお前に頼まれて来てやっただけだ」
「あー、ハイハイわかりました。
ったく……天馬がいたら楽なんだけどなぁ」
しかもザナークは一切手を貸さないと言う。
ホントにコイツは目的以外何もしようとしないヤツだ。
イドラもザナークには期待してなかったのか、呆れたような顔をしながらブツブツと文句を口にした。
すると、ふと瞬木が苦笑いを浮かべながら告げた。
「いや……俺の�牘騰瓩埜�かえば一瞬だけど？」
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