辻 713 ページ16
「何か気付いたか？」
俺の考えを察したのだろうか。
ザナークは口角を上げて俺を見遣る。
何か知っているような顔だ。
……というか、コイツは知っているんだろうな。
「…………お前は、何か知っているんだな？」
「ああ、全部知ってる。
あの女の目的も、正体も、お前が何故こんな所に連れて来られているのかも」
「ならいい加減話してくれないか…！
このままAを疑い続けたくないっ……！」
「っはは！疑い続けたくない、か。
お人好しもここまで来ると病気だな」
「っ……」
やはりザナークは知っている。
だが教える気はないらしい。
それどころかバカにされ、俺は歯を食い縛る。
疑いたくない……Aを信じたい。
だが、今聞いたザナークの話と未来から来たと言うAの容姿があまりにも一致している。
身長が高くて、髪は長いし、下は短パンではなくスカート。
極めつけは能力の宿った左右の手の色。
イドラの方は右手が白く、左手が黒い。
しかしAはソレが�猗薪将瓩靴討い襦�
彼女が未来からではなく、�猗薪樟こΝ瓩�ら来たイドラだとするのなら……目的は？
未来から来て、過去を変えたいならまだわかる。
だがパラレルワールドは多分、別だ。
別の次元の過去を変えた所で、自分達の次元ではないのだから、未来には何の干渉もしない。
ただこっちの世界の未来が変わるだけ。
それでも、わざわざこっちの次元に来ているのだ。
きっと何か理由があるはず。
だとしたら、それは一体………
「心配するな、ちゃんと教える」
そこまで考えて、ふとザナークが口を開いた。
横目で俺を見遣り、ザナークは口元を引き結ぶと
正面を見据えながら続けた。
「だがまずは、あの女を助けに行く」
「た……助ける？」
直後、目の前で突如火柱が立った。
どうやら爆発か何かが起こったらしい。
何事かと俺は顔を上げると、少し離れた正面の建物
廃れた教会から煙が上がっていた。
な……なんだ？急に建物が……！
「ｯﾁ、遅かったか…！」
「遅かった…？それってどういう……」
「しっかり掴まれ！飛ばすぞ！」
「えっ？！ち、ちょっと待て、話をっ……！！」
建物が爆発してから、明らかにザナークの顔色が変わった。
ザナークはハンドルを握り直すと、俺の有無も言わさずにスピードを上げ、火元に向かう。
俺は慌ててまたザナークの背中にしがみついた。
い……一体、何が起きているんだ……？
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