▼届いて ページ3
「「うおおおおおおおお！！」」
ほぼ同時に皆で蹴りを叩き込むと、重力に従っていたエネルギーは方向を変え、真反対の方向に。
蹴り返す事には成功した…！
そのままエネルギーは空へ、宇宙へ、そしてブラックホールへと向かい、彼方へと飛んでってしまった。
さっきまであんなに大きな、スタジアムを押し潰せそうなぐらい大きかったのに。
今ではもう指で摘めそうな光の粒が見えるだけ。
ﾎﾟﾄﾑﾘ「あの光が、ブラックホールに届けばっ…！」
あとは見守るだけだった。
あの光が、皆の想いが、ブラックホールまで届けば。
ブラックホールは消えてなくなるはずだから。
静寂。静まり返ったスタジアム。
皆の視線は皆、空へ。
彼方に輝く光へ。
私は祈った。私の神様に。
どうか、皆の想いが届いますようにって、願った。
ふと、遠くで輝いていた光がより一層輝いた。
その眩い光はスタジアムを覆い、私も思わず目を細めた。
片手で目元に影を作り、ブラックホールの行く末を見遣る。
光は次の瞬間、大きく瞬いたと思うと
ブラックホールを呑み込むように、包み込むように広がり、そして収束。
光が収まると、そこにブラックホールはなく
地球とは違う紫色の空が広がっていた。
A「……………空？」
あっという間の出来事だった。
それまであったブラックホールは、次の瞬間にはキレイさっぱり、跡形もなく無くなり、私は呆然と空を見上げる。
ファラム・オービアスの空は地球と違って、夜でもないのに紫色の空だった。
違和感は感じるけれど、でもこれはこれで綺麗だ。
ブラックホールが浮かんでいた時はただただ禍々しくて不気味だったけど、本当はこんなに綺麗だったんだな。
ﾎﾟﾄﾑﾘ「………………成功だ。
ブラックホールの、消滅を………確認」
次の瞬間、今までで1番の大歓声が観客席から湧き上がった。
ポトムリもモニターを見て目を見開き、珍しく驚いた顔をする。
歓声はベンチでも湧き起こり、私の瞳にもまた涙が滲む。
そうしたら和人が目敏く見つけてさ。
わざとらしく「泣いてる？」って聞いて来やがったから、慌ててそっぽ向いて涙を拭った。
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