ト シ ノ サ 【不動明王】Part14

風邪引いたらどうするんだ ページ37

「あんまりお水掛かりませんでしたね」



イルカショーを見た古城の率直な感想は、やはり彼女らしく少しズレていた。

ショーには間に合ったものの、やはり前の方の列は取られていたので、4列目ぐらいに座ったんだが
そもそも水を使った派手な演出がなく、そのおかげで水も全然飛んで来ず、最前列のお客さんもちょっと水しぶきを浴びた程度だった。


まぁ、こんな真冬にイルカから水ぶっ掛けられて嬉しい人なんて古城ぐらいしかいないだろう。

夏だったらきっとバケツで水を浴びたかのようにビチャビチャになるんだろうな。



「水掛かりたかったのか？」

「掛かりたかったです」

「そんなんで風邪引いたらどうすんだ…」

「フドウさんが看病してくれるでしょう？」

「俺がお日さま園にわざわざ看病しに来いと？」

「あ、プリンとかもあると嬉しいです。
風邪の時って食欲無くなってしまうので」

「ホントか？？」



……風邪とは言え、コイツが食欲無くなってる所が想像出来ない。

いや、そもそも俺が看病しに行く前提で話すな。
俺が行く前に真名部とか狩屋がしてくれるだろーよ。


まぁ、でもショー自体は楽しかったようで、その後はイルカショーの話を楽しそうに話し始める古城。

そんな話をしながら中に戻って、また魚を見て回る。
勿論、ヒトデとかナマコとかも触って来た。


アイツ、ホントに触れたんだ。
ヒトデとかナマコとか。
周りの女子はヒーヒー言いながら触ってたってのに。
コイツの場合は鷲掴みだ。

しかもヒトデを掴んで第一声が何だったと思う？
『何処食べるんでしょう？』だった。
少しは食べ物から離れてほしいものだ。



「不動さんは触らないんですか？」

「あー…そういうのパス」

「こんなに可愛いのに？」

「そんなに可愛いヒトデさんをさっき食べようとしてませんでした？」

「可愛いと食欲は同じですから」

「何それ、怖い」



真顔でそんな事言わないで欲しい。

いや、コイツの場合は表情が乏しいだけか。

楽しいんだ→←改めて回るんだ

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す