ト シ ノ サ 【不動明王】Part14

言い逃げなのです ページ27

『………古城、』



溜息の後、改めて名前を呼ばれ、私は思わずﾄﾞｷｯとしてしまう。

続きに期待を込めながら「はい」と返事を返すと、不動さんは少し溜めてから、言葉を続けた。



『寝ないと明日、たこ焼き買ってやんねーからな』

「夜更かしはお肌の敵ですもんね。
おやすみなさい、不動さん」



……思わず被せ気味にそんな事を言ってしまいました。何ならその勢いで通話を切りそうにもなりました。


不動さんったら、なんて意地悪な方なんでしょう……
そんな事言われたら寝るしかないじゃないですか。


私の返答に向こう側でｸｽｸｽと笑う声が。

私の反応を聞いて楽しんでいるんでしょうか。
だとしたら酷いのです。
この人にこそ2日目のカレーが不味くなる呪いをかけた方がいいかもしれません。



『はいはい、おやすみ古城』

「………オヤスミナサイ」



笑いを隠し切れない声で不動さんはそう言うので、私はオウムのように返す。

そのまま本当に通話の電源を切ろうと思ったのですが
その直前に不動さんは続けた。



『明日、楽しみにしてる』

「………へっ、」



ツー、ツー。通話が終わる。
でも私が通話を切ったんじゃありません。

私は頭が真っ白になって。
そうして耳が真っ赤になって。
今聞いた言葉が夢のようで。


ふ……不動さんも、楽しみにしてくれているんですね。

てっきり私だけだと思いました。
だって水族館とかって、子供が行くような所でしょうから。


それにしても……そんな事を最後の最後に言って通話を切るなんて、なんて底意地の悪い人でしょう。

変な声出ちゃったじゃないですか。
どうしてくれるんですか。


ああ、もう、心臓に悪い。
ずっとﾄﾞｷﾄﾞｷしっぱなしで、このままじゃ眠れそうにありません。

でも寝ないとたこ焼き買って貰えませんし。
そもそも寝不足の顔を不動さんに見せたくありませんし。
お肌にだって悪いですし。



……羊を数えたら、眠れますかね。

こういう時、不動さん特製のホットチョコレートがあればいいのですが。

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