覚悟出来てなかったんです ページ10
話を聞いた後、俺は部室棟を出て裏手に回り、誰もいない事を確認する。
スマホを手に取ると、ヒロトに電話を掛けた。
『もしもし…』
「なぁ、ヒロト。お前、古城の親父さんの事でアイツに何か話したか?」
やけに長く感じる待ち時間の後、ヒロトがようやく出てくれた。
なので早々に俺は本題に入ると、ヒロトは向こうで驚くような反応をしてから、少し間を空ける。
そうして次はやけに声を潜めながら、ヒロトは答えた。
『…Aちゃんから、何か聞いた?』
「いいや。…ただ、ここ3日間まともに学校に来てないらしいから。狩屋の話じゃ、飯もまともに食ってないらしいぞ」
『…』
ヒロトの口調はやけに重々しく、向こうで溜息を吐いた。
反応から見るに、どうやらビンゴらしい。
俺は嫌な予感を覚えつつも話を続けた。
「何を話した?」
『……』
「古城の親父さんに何があった?」
『……』
「…まさか…」
『…そう、そのまさかだよ』
ヒロトにそう言われた時、俺はスマホを落としてしまいそうになった。
当たって欲しくなかった想像。
でも何処か考えていた未来。
ヒロトは続けた。
『___Aちゃんのお父さん、亡くなっちゃったんだ』
−−−
立てない。
力が、入らない。
ベットの上で項垂れる。
起き上がろうにも、体が重くて。重くて。
指先1つ動かすのだってつらい。
ズルズル這いずって移動するのも、つらい。
何もしたくない。
何も考えたくない。
なのにお腹が減って。喉が乾いて。
それがなんだがムカついた。
「(想像しない、事はなかったのに)」
枕に顔を埋める。
考えたくないのに、考えるのはお父さんの事ばかり。
想像してない事はなかった。そのはずだった。
何度も何度も考えた事はある。
ただ、最後まで考えなかっただけで。
現実が、受け入れられない。受け入れたくない。
でもヒロトさんが嘘をつく人ではないとわかってる。わかってるから。
だから。
「(覚悟、出来てなかった)」
ボロボロと壊れた蛇口のように、瞳から溢れる涙。
折角止まったと言うのに、また。
寝返りを打とうとして、打てなくて。億劫で。
少し身動ぎして、結局動かないで、また枕を濡らす。
「(何も、出来なかった)」
強く握るから、もうグシャグシャだった。
私はまた目を閉じる。
何も考えたくないから。
何もしたくないから。
……夢であって、欲しいから。
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*IJu*(プロフ) - 白銀さん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けて嬉しいです^^更新頑張りますー! (2021年11月27日 23時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
白銀 - めっちゃ好きです。頑張ってください! (2021年11月25日 0時) (レス) @page4 id: e22066a027 (このIDを非表示/違反報告)
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