押し掛けるんだ ページ13
「とっ……とにかく!不動コーチ、Aと話したいんでしょ?……違うの?」
だがすぐ思い出したかのように顔を上げてそう言う狩屋。珍しくて俺は「お、おう…」なんて返事を返してしまったが、狩屋は気にしてないのか「じゃあ行きますよ!」とスタスタ玄関の方へ行ってしまった。
慌てて狩屋の後を追い掛けた。
「……Aの事、ちゃんと元気にしてやって下さいよ」
「そ、そう言われてもなぁ……ちょっと今回は難しいかもだぜ?」
「どうしてですか?」
「ど……どうして、って……その……どうしても……」
「……もう不動さん以外に思い付かないんですよ。Aを元気にしてくれる人。だから、何としてでもAを元気にして下さい。それまで家に帰しませんからね」
「えぇ……」
そんな会話をしている内に玄関前に辿り着く。
狩屋の指示で扉のすぐ横に立つと、狩屋は扉の取っ手に手を掛けて、1度俺の方を見遣る。
だから俺はアイコンタクトを取ると、狩屋は最後にボソッと呟いた。
「……ちゃんとAを元気付けたら、認めてやらないこともないですから」
「えっ……」
次の瞬間、玄関の扉は開かれ、扉の前にはあの赤髪の野郎が立っていた。
ソイツは『おかえり』と言おうとしていたようだが、途中で俺の存在に気付き、言葉が詰まる。
目が合うと大きく見開き、俺を指差しで何か言おうとしていたようだが、そんな暇は無い。
俺は「失礼するぜ」と返答も待たず上がり込むと、ようやくヤツは声を上げた。
「お、おまっ……!なんで帰ってねェんだよ?!
おい、勝手に入んな!待てっ…!」
「ごめんね〜、南雲さん」
俺の後を追い掛けようとするヤツ。
ソレを打ち合わせ通り狩屋が前に立ちはだかって引き留めてくれた。
当然、赤髪のヤツは避けようとするが、流石DF。
ピッタリ動きを合わせて抜かせないようにしてくれていた。
「早く行って、不動さん!」
「なっ…お前らグルかよっ?!」
「っ……悪い、狩屋っ!」
狩屋が引き留めてくれている間に俺は駆け足で階段を上り、2階へ。
彼女の部屋の前まで来ると、俺は1度深呼吸してから扉をノックする。
しかし案の定、中から返事は無かった。
だから俺は咳払いをすると、扉越しにそっと古城に声を掛けた。
「あ〜……古城?いるんだろう?
少し……その、話したいんだが」
どう声を掛ければいいのか。少し考えて、まずは無難に。しかし中からの返事は無く、俺は思わず頭を抱えた。
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*IJu*(プロフ) - 白銀さん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けて嬉しいです^^更新頑張りますー! (2021年11月27日 23時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
白銀 - めっちゃ好きです。頑張ってください! (2021年11月25日 0時) (レス) @page4 id: e22066a027 (このIDを非表示/違反報告)
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