彼は許されるのか ページ31
「……確かに、アナタがやった事は許されないわ」
ふと、リラが口を開いた。
「私だって許せないもの。
私に関する記憶を全部消して、挙句にAに私の名前を付けるなんて」
「…やっぱり、リラも怒ってる?」
「ええ、怒ってる。そこはAと同じよ」
許せない、そう言っているリラの声音は驚く程優しくて。聞いていて、複雑な気持ちになった。
表情も酷く穏やかで、怒ってるようにも見えないし。
おもむろにリラは横目でこちらを見遣る。
俺の反応を伺っているのだろうか。
何となく、心の内側を見られているような気がして俺は顔を上げると、リラは微笑みを浮かべた。
「……でも、ソレはもう済んだ事よ。
だから気にするような事でもないわ」
「…?許せないのに、気にしないの?」
「気にしてても疲れちゃうし……
それに、前のゴウセルがやった事じゃない。
あとアナタは私の夢を叶えてくれたから」
「夢……?」
「そう、夢」
リラはそっと目を細めると、何かを思い出しているのか、1つ溜息を吐いた。
少し憂いを帯びた表情。
サイドに伸びた黒髪を1束掴んで、自分の指でクルクルと弄びながら更に続けた。
「……また、あの子と過ごせるチャンスを。
それも、私の嫉妬心を抑え込んだ状態で過ごせるチャンスをくれた……
その事については私……アナタに本当に感謝しているの。
だから、アナタのやった事は気にしないであげる」
かと思ったら、こちらを向いてちょっぴりお茶目な微笑みを浮かべた。
その微笑みは何処かで見覚えがあるような。
誰かの面影と重なるような微笑みだった。
……リラも許してくれない。
心優しいリラが許してくれないなんて。
俺は相当罪深い事をしてしまった。
でも、許してくれようとはしている。
こんな俺を許してくれようとしている。
優しいなぁ、彼女は。
「……ありがとう」
自然と口から出た言葉。
リラは「こちらこそ」と微笑んで、手摺に頬杖をついた。
「Aにも許してもらえるといいわね」
「許して……くれるかな。
彼女、随分根に持ってるみたいだから」
「そうねぇ、Aは昔から嫌な事はずっと覚えてるタイプだからねぇ」
「……ゆるしてくれるかな」
「そ、そんな落ち込まないで、ゴウセル…!
私もほら、ね?協力してあげるから…!」
本当に、リラは優しい。
でも優しいからこそ、許せない事もある。
だからAはきっと、許してくれないんだろうな。
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*IJu*(プロフ) - Schall_108さん» こんばんは、コメントありがとうございます!そう言って下さって嬉しいです…!掛け持ちしているのでノロノロ更新ですが、是非気長にお待ち頂けると…!すみませんorz (2021年4月7日 0時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
Schall_108(プロフ) - こんばんは!やっぱりこの小説好きです!毎日更新楽しみにしてます)^o^( (2021年4月4日 23時) (レス) id: ac70789a4c (このIDを非表示/違反報告)
*IJu*(プロフ) - Schall_108さん» コメントありがとうございます…!!て、徹夜?!余程夢中になられたんですね…!恐縮です(´˘`*)まだまだこの物語はつづきますので、宜しければ最後までお付き合いして頂けると嬉しいです…!更新頑張ります〜! (2021年1月20日 0時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
Schall_108(プロフ) - ゴウセルの夢小説を漁っていたら!この作品に会いました!読むのがやめられなく6時間かけて徹夜で読んでしまいました!更新楽しみに待ってます!あと‥。素晴らしい作品を長い間書き続けて頂いてありがとうございます!本当にこの作品大好きです! (2021年1月19日 6時) (レス) id: ac70789a4c (このIDを非表示/違反報告)
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