◇ラプンツェルは見つかった ページ48
「………」
「………あ………も、戻って、たん…だ」
嫌な予感は的中。
気付いたらそこにはクドウ監督が立っていた。
しかも、心做しか怒ってるような表情で。
視線が鋭く突き刺すように私を見下ろす。
………この顔、絶対今のやり取り見てた。
これはもしかしたら私、怒られちゃうかも……
ごめんね、ツナミ……バレちゃった……
「………黒井」
「あーあーあー!えーと、えーっと!えっとね、その……あのね!違うの!!わざととかじゃないの!
た、ただ…そう、本!この本、すっごく面白くって……!私、こういうよく分からない本が大好きで…!ついつい夢中になって読んでたら、いつの間にかツナミが……!」
怒られる事はわかってたから、怒られる前に私は慌てて椅子から立ち上がると、デタラメな言い訳を並べて、私は監督に渡された方を指し示す。
ああ、でも監督の視線が氷の女王のように冷たい。
嘘だとバレてるし怒ってるのも変わってない。
私の視線はだんだん下に落ちていき
遂には本で顔半分を隠してダラダラと汗を流した。
『ひょっとして、今なら…!』
そんな中、ふと階段の上の方からエンドウの声が聞こえたと思ったら、ドタドタと沢山の足音が階段を下る音が響く。
多分、窓から外に出て行くツナミを見ていたんだろうな。それで、自分達も出ようと思ったんだ。
でもタイミングは最悪。
私を見下ろしていた監督は階段の方を向くと、階段を下りて来ていたエンドウ達がすぐUターンして階段を上って行った。
「……あの、ツナミの事は怒らないで……」
「……」
再び静かになる玄関前で、私は本から顔を覗かせ、小さく呟いた。
でも監督は何も答えない。
ただ無言で階段を見て、1つ溜息を吐くと
そのまま私の方を向き直った。
「…別に叱るつもりはない。
綱海にはあとで穴埋めをしてもらう」
「ほ…ほんと?」
「それと、」
「うぐっ……な、なに…?」
せめてツナミの事は怒らないように頼んでみたら、意外と怒らないみたいでちょっと安心。
でもまだ言葉は続くみたいで、私は再び背筋を正すと、心做しか監督の眼光がほんの少し解れた気がした。
「病院に行く時は、前もって私に一言言ってから行く事」
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*IJu*(プロフ) - みづきちさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けてるようで良かったです( ˇωˇ ) (2020年11月5日 2時) (レス) id: 1371b955e9 (このIDを非表示/違反報告)
みづきち(プロフ) - 尊い、、、ありがたや(拝) (2020年11月4日 22時) (レス) id: 1fec416d23 (このIDを非表示/違反報告)
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