◇ラプンツェルは勝手に傷付いた ページ17
「それよりAちゃん、大丈夫?」
「…へっ?」
話が変わったと思ったら、ヒロトにそんな事を言われて、私は思わず目を瞬かせる。
するとヒロトは心配したような顔をして続けた。
「ほら、不動くんと話してから何だか元気無くなってたみたいだから…」
「あっ…ふ、フドウの事…」
…そんなに今の私って元気無いのかな?
トビタカに続きヒロトにまで聞かれて
私は思わず視線を窓に向けた。
ガラスに映る、冴えない自分の顔。
そんな顔と目が合った気がして、私は視線を落とす。
脳裏に浮かぶフドウの顔は冷たかった。
言われた言葉も冷たくて、何もかもが冷たくて。
…最後にフドウに触れた時の温もりを
忘れそうな程冷たくて。
「なんて言われたか、わからないけれど…
何か酷い事でも言われたの?」
「う…ううん!ううん!そうじゃないよ!そうじゃない!そこは誤解しないで!」
思わず黙ってしまった私にヒロトは更に心配そうに尋ねて来て、私は咄嗟に首を横に振った。
酷い事は言われてない。
ただ、初対面だって言われただけ。
勝手に傷付いたのは私だから。
それにフドウに酷い事を言ったのは私の方。
酷い事をしようとしたのも私の方。
だからアレは当然の結果なの。
当然の報いだから。
「ただ、その……私、フドウに嫌われちゃってるだけだから!」
「嫌われてる…?」
「そう!ちょっと色々、色あって…その、嫌われ、ちゃって……だから……うん」
「……そっか」
「で、でもでもでも!本当、大丈夫だから!
多分、放っておいたらまた前と同じようになるだろうし……」
また暗い方に考えちゃいそうで。
そうしたらまたヒロトに心配かけそうで。
だから私は自分にも言い聞かせるように明るい方に無理矢理持って行こうとしたら、不意に頭の上にあたたかい感触が乗っかった。
ソレは優しく私の頭の上を動いて、私の気持ちを宥めてくれる。
おもむろに顔を上げると、ヒロトは私の頭を撫でながら微笑んでくれていた。
「…無理はしないでね。
俺の前だけでも素直になってもいいんだよ」
「ヒロト…」
「Aちゃんが悲しんでる所、あんまり見たくないからね。俺でよければ話とかも聞いてあげるから」
優しいヒロトの言葉に沈んだ心がちょっとだけ軽くなった気がした。
思わずポロリと溢れる涙。
ソレを自分の指で掬ってから、私は窓に手を置いた。
少し言い淀んでから、私はゆっくり口を開いた。
「…あのね、フドウがね…」
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*IJu*(プロフ) - みづきちさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けてるようで良かったです( ˇωˇ ) (2020年11月5日 2時) (レス) id: 1371b955e9 (このIDを非表示/違反報告)
みづきち(プロフ) - 尊い、、、ありがたや(拝) (2020年11月4日 22時) (レス) id: 1fec416d23 (このIDを非表示/違反報告)
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