◇ラプンツェルの目覚め ページ21
…………
清潔な部屋、仄かな薬品の香り。
真っ白なベットに黄色のカーテン。
……此処は……病院……？
それも、私が入院していた所の……
今までのは夢だったのかなって思ったけれど、違うかも。
だって夢を見る前は確かに付けていなかった呼吸器が付けられ、『ピ、ピ』と無機質な機械音が部屋に響いていたから。
「………？………こ、ぇ……ぁ……？」
ワケがわからなくて、思わず声を出す。
でもその声だって、まるで私じゃないぐらいにか細く掠れていて、出しづらかった。
呼吸器付けてるのもあるのかな。
現状、それだけでも驚いたのに。
頭が混乱してたのに。
直後に「A！」と二重に呼ぶ声がして、私は動かしづらい首を動かして、声のした方を見た。
「………ぉ、とぉ、さ……？
……お、かぁ……さん……？」
………部屋の隅っこの椅子には、お父さんとお母さんが座っていた。
2人ともテレビで見た時と変わらなかった。
あの時と同じように、目の下にクマを作って、2人とも涙を流していた。
どうして2人がこんな所にいるのか。
どうして今更こんな所に来たのか。
尋ねる前に2人は私のベットの周りに駆け寄って、お父さんは目頭を押さえながら私の頭を撫でて、お母さんは膝から崩れて私の胸元で子供のように泣きじゃくった。
「良かった……良かった……！目を覚ました…！良かったっ……！」
「よく頑張ったな、A……これからはもう、寂しい思いはさせないからな…！」
「……？………？」
急に来たと思ったら、意味のわからない事を口にする2人。
私は微かに眉を顰めると、2人は混乱している私に気付いたのか、泣きながら笑って話し始めた。
その話によると、私は救急車で病院に運ばれた後、海外に行って手術したんだって。
その結果、手術は見事成功し、そうしてまた私は日本に帰って来て、前と同じ病室に戻されたんだって。
その間、私はずっと眠っていて、1度も目を覚まさなかったらしいよ。
海外のお医者さんはそんな私の事を『オーロラ姫』って呼んでいたんだとか。
ああ、その話の時に2人が今までどうして私の所に来なかったのかも教えてもらったよ。
単純に2人とも、お仕事をしていて会いに来れなかったんだって。
とは言っても私の事を忘れていたワケじゃない。
寧ろ、私の為にずっとずっと働いていたんだって。
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