【イナイレ】シッカーラプンツェル5【不動明王】 (ページ19)

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◇ラプンツェルと大穴ページ19

無愛想な真っ黒の人。ただ黙々と暗闇を進む。
暗闇だから周りを見ても何にもない。つまんない。

……って、思っていたら、ふと周りの温度が肌寒くなっていくのを感じた。

さっきまで春みたいにあったかかったのに……
思わず私は身を震わせた。

しかも真っ黒な人が進む度にどんどん温度が下がっていく気がした。

相変わらず真っ黒な人の手はあたたかいけれど
周りが寒くなるんだから、不安にだってなっちゃうよね。

『ね…ねぇ！少し寒くなって来てない…？
さっきの場所に一旦戻ろうよ…？ね？』

『…』

私は空いた片手で自分の肩を擦りながらダメ元で言ってみるけれど、やっぱりダメ。何にも答えてくれない。

この人、何処に向かっているの…？
どんどん寒くなって来てる……北極にでも向かっているのかな？

気付けばまるで冷凍庫の中にいるような温度だ。
寒くて寒くて堪らなくて、私は唯一あたたかい真っ黒な人の手に縋る。

でもこの人にこのまま縋っていたら、もっともっと寒い所に連れて行かれそう。

というかこの人は寒くないのかな…？
さっきからただ歩くだけで寒そうとかはないけれど……

『……』

『…？』

不意に、目の前の人の足が止まる。

そうして真っ黒な人はゆっくりと振り返った……気がした。

もう片方の手が、頭上を指差す。

私は不思議に思いながらもそっと上を見上げると
そこには驚く事に大きな真っ白い穴があった。

人が何百人にも一気に入れそうな大穴。
この空間と対照的に真っ白で平面的な、でも確かに穴だった。

若干光っているようにも見えるけれど……

この真っ黒な人は私を此処に連れて行きたかった…？

『＿＿＿』

『……え？』

まじまじと大穴を見上げていると、不意にﾎﾞｿﾎﾞｿと話し声が聞こえた。

それは紛れもなく、目の前の真っ黒な人が発していた。

私は視線をその人に戻し、何とか聞き取ろうとするけれど、声が小さ過ぎるのか、それとも元々意味の無い言葉を並べているだけなのか。私には理解出来ない言語なのか。

その内容を理解する事は出来なかった。