変わって欲しくないんだよ ページ28
部活が終わり、帰る時間になる頃には、いつの間にかAはいつもの調子に戻っていた。
練習始まる前までは落ち込んでたクセにさ。
終わったら「お疲れ様でした」ってしれっといつものように話し掛けて来て。
「戻ったの？」って聞いたら「何の事です？」ってすっとぼける始末。
嘘つくのヘタなクセにさ。
Aのそういう所、あんま好きじゃない。
「…不動コーチの件、どうにかなったの？」
「な、何故わかったんですか？
私が土曜日の試合の日に不動さんの傍に居られない事に落ち込んでいるのに……！」
「いや全部今言ったな？
俺の悩んでた時間返してくんない？？」
でも戻ったら戻ったで腹立つ。
帰りに寄れたらコンビニ寄ってAの好きなお菓子奢ってあげようかなとか考えてたのに。ムカつく。
すっかり元通りのAに戻って、嬉しいようなそうでもないような。
ま、とりあえず落ち込んだ顔はこれ以上見たくなかったから、良い事ではあるけれど。
………不動コーチが主に絡んでると思うと素直に喜べない。
Aが不動コーチの事をお父さんに似てるって言ってたし、別にそういうのではないとは言ってたけれど……
でも想いを寄せてる女の子の横に自分じゃない別の男の人がいるのを見るのはやっぱﾓﾔﾓﾔする。
別にヤキモチとかではないケドさ。
…いや、ホントに違うから。
そういうんじゃないから。
そういうのじゃなくって。
ほら、俺だって一応……Aの家族だし？
だから……なんだろう。
取られるのが嫌なのかな。
小さい頃からずっと一緒にいたのにさ。
自分の大切なモノを横取りされた気分。
まぁ…Aとはそんな最初から仲良かったワケではないけれど……寧ろ、最初は避けてたけど。
でも今は違うもん。
俺、Aのお目付け役もらうぐらいには傍にいるから。
…………だから、その。
「それより御迎えの人がもう来ているようですよ。
早く行かないと外出禁止日数を増やされてしまいます。行きましょう」
「………うん」
門の前に立つクララさんの方を見て、Aは俺の手を握ると踵を返してそっちの方に向かう。
手を繋がれた俺も必然的にAと一緒の方に向かう。
クララさんは相変わらずの顰め面で「行こう」と言った。
………だから、あんまりAには
変わって欲しくは、ないかな。
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