トシノサ【不動明王】Part13 (ページ27)

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問題解決なのですページ27

「なぁんだ、そんな事か～！
だから帝国学園に転校したいとか言ってたんだ！」

「そこまでか……つか、どんだけ不動コーチが好きなんだよ？練習試合の日だって来てはくれるんだろ？
なら会えるじゃねーか」

「でも雷門のベンチにはいてくれません。
いるのはきっと反対側のベンチでしょう。

つまり、いつものようにお傍にいれないんですよ？
まるでロミオとジュリエットになった気分です……」

「ンな大袈裟な……大体、反対側なら隣にいるよりよく見えるだろ、不動コーチ」

「…………………それは、そうですけれど」

「オイ」

不覚にもちょっと考えてしまいました。

確かに瀬戸さんの言う通り、向こう側のベンチからなら不動さんのお顔がよく見れそうなのです。
いつもは下から見るので首が痛くて。

……でもやっぱりいるからにはお傍に立ちたい。

横からその凛々しいお顔を、首を痛めても眺めたい。
そしてすぐ近くで『古城』って呼んでほしい。
あとちょっかい掛けたい。

ちょっかい掛けたい。

「別にずっと会えないってワケじゃないんだから…
連絡だって取れるんでしょ？」

「はい…そうですけれど」

「いっそ試合中、ずっとイナライン送ってみたらどーだ？」

「天才ですか？」

「…………本気にすんなよ？」

瀬戸さんの思わぬ妙案に私は一瞬本気にしましたが、すぐに釘を打たれてしまいました。

…まぁ、試合中にそんな事しても不動さんには無視されますね。確実に。

それに怒られる未来しかないのです。
暫く怒られるのは御免蒙りたい。

「試合が終わったら話しかけたらいいんじゃない？
ほら、いつもみたいに！」

「そーそー。別に1日中話せないってワケじゃないだろ？」

「…試合中、不動さんの写真もちょっと撮ってあげる」

「ありがとうございます、山菜さん。
一生ついて行きます」

終始しょんぼりしてしまいましたが、山菜さんのその一言で私は顔を上げ、山菜さんと堅い握手を交わした(ただ私が一方的に握っただけですが)。

それに葵さんの言う通り、試合が終わった後に話しかければ良いですもんね。
なんだ、案外深刻な問題ではありませんでした。

………元々そんなに深刻じゃない、とは言わないで下さい。

好きな人が目の前にいるのに話し掛けられない苦しみは、恋する乙女が持つ悩みの1つなのですから。