もう帰っちゃうのです ページ19
「でもAのスマホの暗証番号、誕生日を分けて素数で割るだなんて…暗号みたいで面白いね。
僕も今度からそうしようかな」
「一応、私と陣君はアナタの誕生日を把握しておりますが、その人達を目の前にそんな事言っても宜しいのですか？」
「ああ、大丈夫だよ。少なくともAと真名部君は人の個人情報を悪用したりしないってわかってるから」
「よくわかってるじゃないですか」
「何誇らしげにしてんだよ…」
当然です。人から信頼されるのに悪い気はしませんから。
勿論、その信頼に添い私は人の個人情報を勝手に暴こうだなんてしませんもん。本当ですよ、誰かさん達とは違いますから。
だから円堂さんに不動さんの生年月日とか聞いた事は忘れて下さい。
勝手に不動さんのスマホを弄って電話番号を入手した事は忘れて下さい。
「…まぁ、とりあえず今日はそろそろお開きにしましょうか。時間も時間ですし」
「後半は狩屋君に勉強を教える会になってたけどね」
勉強も一段落し、時間もいい頃合になったからでしょう。
不意に陣君がそう言い出すと、2人共話しながら荷物を纏め始めた。
もう帰っちゃうのですか……
時間が余ったらボードゲームをしようと思いましたのに。
何なら用意してましたのに。
「…ところでA、どうして僕の家での勉強会は断られたのに、この部屋での勉強会は了承したんですか？何か理由が？」
「はい、実は私、現在進行形で外出禁止命令が出されていまして」
「………へっ？」
「因みに期間は1週間です。
………あ、1日経ったから6日間ですかね？」
「ああ、だから真名部君の家はダメだったんだ」
「…………アナタ、今度は何をしたんですか？」
「今度はってなんですか、今度はって」
荷物を纏め、陣君と皆帆君が立ち上がると
陣君が思い出したように尋ねて来たので、私はそのまま説明しました。
そうしたら陣君に呆れたような顔をされ
皆帆君にも苦笑いをされてしまいました。
仕方ないのです。
誰かさんがヒロトさんに教えたものですから。
あの人は本当に意地の悪い方なのです。
…………まぁ、そんな所も嫌いでは無いのですが。
「じゃあ暫くは外で遊べないんだね」
「でも1週間はすぐなので、無問題です。
……延びなければの話ですが」
「ま、暫くは大人しくしておいて下さい。
その方がこちらも安心ですし」
「…………どういう事ですか？」
「…………いえ、特に深い意味は」
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