お勉強するのです ページ2
陣君から貰ったクッキーを食べ、ついでに用意していたお茶と菓子も出し、談笑もそこそこに私達はそれぞれノートと苦手分野の教科書を取り出して、勉強会を始めました。
「鉛蓄電池の放電時には正極と負極でそれぞれ別々の反応が起こります。Aはこの辺りで時々狂ってしまうんでしたよね。まずはこの辺りから復習してみて下さい」
「はいなのです」
「目的と行動の単語がまた入れ替わってますね。
あと、この文章では現在完了形なのに過去を表す『when』が入っています。皆帆君は所々でこういったミスが目立ちますので、問題文をよく読んで落ち着いてこの辺りをやってみて下さい」
「わかった、やってみるよ」
とりあえず、私と皆帆君は前回の復習も兼ね、それぞれつまづいている所やわからない所を陣君に伝えると、陣君は教科書にある問題文を指差して、まるで先生のように答えてくれました。
陣君は全科目において優秀な秀才君なのです。
特に数学が飛び抜けていて、まるで機械で計算したかのように瞬時に正確に、しかもどんなに複雑な計算でも頭の中で出来る人なのです。
そんな陣君の教えもあって、おかげで私も数学が得意になりました。
流石に陣君程ではありませんけれど。
「……それで、アナタは？」
私と皆帆君に指示を出し、陣君は表情を改めると呆然としていた狩屋君の方を見遣る。
そうして陣君と目が合うと、狩屋君はﾋﾟﾝと背筋を伸ばし、少し強ばった表情のまま、そっと教科書を陣君の方へ差し出した。
狩屋君が出していた教科書は数学。
陣君が特に得意とする科目です。
だからなのか、陣君の眉間が一瞬ﾋﾟｸﾘと反応を示す。
そうして教科書を受け取ると、陣君は不機嫌そうな顔をしながらもﾊﾟﾗﾊﾟﾗとページに目を通し、狩屋君に尋ねた。
「……どの辺りが特に苦手なんですか？
2次関数？それとも確率？図形の証明？」
「えぇっと……………図形全般。
あ、でも確率もちょっとよくわかってないし、不定方程式とかも難しいヤツは無理で………」
「はァ……」
おずおずと答える狩屋君に、陣君は教科書を眺めながら溜息を1つ。
結構な量を曖昧に提示されて呆れているのでしょうか。
お気持ちはわかりますが、何もそこまであからさまにしなくても……
でも流石、陣君です。
陣君はとあるページを開くと、私達の時と同じように教科書内の問題を指差し、狩屋君にも言いました。
「では、まずはチェバの定理から」
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