△リボンが173こ▽ ページ29
6時54分。ようやく夕食が完成した。
とは言っても、魚のムニエルに野菜のソテー、レンジで温めるタイプの白米だけなのだが。
真名部1人でやればもっと早くに終わったであろう。
それが叶わなかったのは間違いなくAのせいである。
そのせいで夕食が出来上がる頃には真名部は酷く疲弊した様子でカウンターに出来上がった料理を並べていた。
対してAは何処吹く風か。
嬉々としてカウンターに並べられる料理をソファの前にあるテーブルに置いて行く。
その時の彼女も料理していた時と同じく楽しそうで
真名部は内心、文句を言いたいくらいだった。
「まなべ、今のでご飯は全部?」
「ええ…そうですよ」
「お箸で食べる?ママのならあるよ」
「いえ、割り箸を使うので大丈夫です」
「割り箸!私が割りたい!」
「……いいですけれど」
カウンター越しに無邪気に笑うAに真名部は訝しげな顔をしながらも、ビニール袋から割り箸を取り出してAに預けた。
Aはソレを受け取ると、やはり上機嫌でテーブルの方へと向かおうとした。
「…あ、もし宜しければ先に食べちゃって下さい。
僕は手を洗って来ますので」
散らかったキッチン周りを軽く片付けながら、真名部はなんとはなしにそう言った。
魚を捌いたのは真名部なので、手に魚の臭いが付いてしまったからだ。
その生臭い臭いは調理中も終始気になっていたが
Aの危なっかしさを見たら一瞬でも目を離すのもはばかられ、なかなか洗いに行けなかったのだ。
「…?いいの?」
「えっ…な、何が…ですか?」
「食べてもいいの?
アレ、まなべの分じゃないの?」
「…!」
キョトンとした顔をして、首を傾げるA。
その反応に真名部はふと彼女の話を思い出した。
Aは母親と住んでいた時、まともな食事を出されてはおらず、いつも母親の食べ残しを食べていた。
つまり、彼女の分も食事が用意された事はきっと今まで無かった。
もしかしたら、今日で初めてなのかもしれない。
だから、明らかに2人分用意されているはずの夕食も
彼女はその片方が自分の分だと夢にも思っていなかったんだろう。
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*IJu*(プロフ) - ルナストーンさん» 御指摘ありがとうございます!そうですね、それですね(´・ω・`)早速直して来ます〜! (2020年12月17日 23時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - あのー[△リボンが181こ▽]の[鼻を突かれで、真名部は毛布の中に顔を引っ込めた]のところの[鼻をつかれで]になってますが、[鼻を突かれて]なのでは? (2020年12月17日 16時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
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