△リボンが164こ▽ ページ20
一体何処に行ったのかと真名部は少し不安になったが、彼女はすぐに戻って来た。
だがその手に握られた服は先程とは別の物。
「じゃーん!」と彼女の効果音付きで持って来たソレは、可愛らしいアウターだった。
「コレコレ!コレがいい!コレかわいいでしょ!ほら!」
「え、えぇ……か、かわいい……ですね」
Aは見せながら自分の体にかざして見せ、真名部は思わず狼狽える。
素直に似合っている、と真名部は思った。
オシャレについては詳しくは分からないが、その上着を着ている彼女の姿が目に浮かび、微かに目を細めた。
丁度今着ているワンピースにもピッタリだ。
購入してそのまま着て帰っても良いだろう。
しかしその服は今までAが真名部に見せてきた物の中にはなかった、つまり初めて目にした物だ。
手当り次第に彼女の興味を引く服を次々と見せに来ているだけなのかと思ったが、今の感じだとまるで最初から決めていたようだった。
本命は決めていて、でも敢えてAはソレは見せず、適当な服を真名部に見せに来ていたのだろうか。
もしかしたら1人で待つ真名部を思い、退屈させないよう彼女なりに気を使ってくれたのだろうか。
「(…いえ、それは流石に考え過ぎですね)」
そこまで考えて、真名部は思わず自嘲した。
彼女は単純な性格だから、そんな事ではないだろう。
強いて考えるなら前者だ。
そう思いつつも心のどこかでは、やはり後者であって欲しいと願う自分もいた。
「とりあえず…これで、良いんですね?」
「うん、コレがいい!コレ欲しい!」
「はい、ではこれにしましょう」
一先ず真名部はその服を受け取ると、嬉しそうな顔をする彼女と一緒にレジへ。
会計を済ませ、タグを取ってもらうと
フィッティングルームで上着を着替え、そのまま2人は古着屋を後にした。
「ねぇねぇ、じんくん!この服似合う?」
「何回目ですか……とってもお似合いですよ」
「ホント?ほんと?」
「ええ、とても…か、可愛い…ですよ」
「…えへへ〜」
外に出てからも何度目かの会話に真名部は思わずクスリと笑う。
真名部に褒められるとAは溶けたように笑って、嬉しそうに繋がれた手をユラユラと揺らした。
曇った空の下で2人は笑う。
まるで恋人のように。
まるで普通の男女のように。
しかし世間は知らなかった。
この2人が誘拐犯とその被害者という関係なのだと。
そう遠くない未来で、その関係が公の場で知られる事を。
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*IJu*(プロフ) - ルナストーンさん» 御指摘ありがとうございます!そうですね、それですね(´・ω・`)早速直して来ます〜! (2020年12月17日 23時) (レス) id: c0312d3eb1 (このIDを非表示/違反報告)
ルナストーン(プロフ) - あのー[△リボンが181こ▽]の[鼻を突かれで、真名部は毛布の中に顔を引っ込めた]のところの[鼻をつかれで]になってますが、[鼻を突かれて]なのでは? (2020年12月17日 16時) (レス) id: f44ffe4945 (このIDを非表示/違反報告)
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