▼精一杯 ページ12
井吹「A、逃げろ…！これ以上はっ…」
ただ突っ立ってる私に井吹も苦しそうにしながらそう言った。
でもここで退いたら井吹がこのボールを受ける事になる。そんなの見たくない。
私は考えた。大して役に立たない脳味噌で考えた。
結果、浮かんだ妙案に私は思わず顔を顰める。
でも、迷ってる暇はない……
こう考えてる間にもフクロウはもう目の前まで迫ってる。
成功するかはわからない。一か八かの賭け。
私はその勝負に出る事にした。
A「ごめん、和人っ…！」
私はその場で飛び上がると、片足を高く掲げた。
すると背後のギロチンがｷﾘｷﾘと音を立てて上がっていく。
ボールが無くても必殺技は使えるようだった。
なら、あとはタイミングを見るだけ。
フクロウがゴール目の前に来た所で
私があのボールにシュートぶち込めば…！
A『ギルティショック！！』
本体ごとゴールに向かっていたフクロウ。
その足が掴んでいたボールに、私は踵を振り下ろす。
タイミングは完璧。
でもソウルの力は想像以上で、少しでも力を抜いたら押し込まれそう。
何とか私ごとゴールさせないように、私も全力でボールを抑え込む。
流石に、ソウルにはっ…勝てないかっ…？！
でも、だからって…ここで引き下がるワケにはっ…！！
A「だァァァァァァ！！！」
意地でも押し込もうとするフクロウに
私も意地で押し返す。
結果、両者共に弾かれて
ボールはその拍子にグラウンドの外に飛んでった。
地面に倒れ込んだ私。
でも背中をぶつけた痛みに呻く前に、私はすぐ起き上がって和人の元へ。
和人はもう元の姿に戻り、地面に倒れ伏せていた。
そんな彼の元に駆け寄って膝をつく。
抱き起こそうとしたら、その前に和人が地面に手を付いて、顔を上げて私の方を見遣った。
皆帆「っ……ごめん、A……」
和人は苦しそうな顔で謝った。
私は首を横に振ると、彼の顔に手を添えた。
A「ううん…私こそごめんな。
さっさと点取ればいいのに……なかなか取れなくって。折角私、試合に入れたのに……」
皆帆「仕方、ないよ……だってAも本調子じゃ、ないんでしょ……？
…でも、お願い……これ以上、無茶はしないで…
Aに怪我は……してほしく、ないんだ……」
A「……知ってる。だから、これでも精一杯やってんだ」
精一杯やって、これなんだ。
私なりに頑張って、これなんだよ。
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