リボンの檻 3 【真名部陣一郎】 (ページ10)

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△リボンが105こ▽ ページ10

「なっ……！？」

真名部は思わず彼女を見遣る。

一瞬、言葉の意味を理解出来なかった。

確認……つまり、真名部が帽子を脱がなければならない。

そうなればバレてしまう。
自分が誘拐された真名部陣一郎だとバレてしまう。

そんな事を知ってか知らずか、Aは笑顔でそんな事を言い出した。

内心、反論を言いたい所だが、警備員の前である。
下手に口を開いて怪しまれたくなくて
真名部は何も言えずに、ただただAを下から睨む。

「あっち、って……あの階段の所かい？」

「うん！此処じゃ人がいるからダメだけど、あっちは人がいないから！じんくんももう少しはお喋りしてくれると思うんだ！」

「(お喋りも何も、話したらアナタだってタダじゃ済まないのにっ……！！)」

人通りのほとんどない階段の方を指差され、警備員は少し警戒したようだが、やがて「わかった」と答えると腰に手を当てた。

「では、向こうで確認しよう。……それでいいね？」

「……」

「じんくん、だいじょーぶだって！」

いっそこのまま逃げてしまおうかとも思ったが、Aの手がソレを許さなかった。

下ろしていた手で真名部の手を握り、警備員の後をついて行く。

真名部はもう半ば諦めムードで、最後になるであろう彼女の温もりを握り締める。

柔らかく、あたたかい彼女の手。
もう少しだけ、この手に触れていたかった。

自虐的な笑みさえ溢れ、真名部は覚悟を決める。

そんな時、ふと隣から小声で声を掛けられた。

「……大丈夫だよ、じんくん」

「…えっ？」

「約束、したでしょ？
怖いのから守ってあげるって。

真名部の〝怖いの〟私がやっつけて(・・・・・)あげる」

にこり、普段とは違う、年相応の微笑みを浮かべるA。

真名部はその表情とそのセリフに違和感を抱き
途端にｿﾞﾜｿﾞﾜと背中に悪寒が走る。

…………嫌な、予感がする。

でも真名部にはどうする事も出来ず
彼女との約束に縋るだけだった。