リボンの檻 3 【真名部陣一郎】 (ページ41)

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△リボンが136こ▽ ページ41

「これって…」

真名部が掴んだ物。
ソレは〝スマホ〟だった。

誰もが知っているスマートフォン。
ソレが山積みになっていた皿の中に紛れ込んでいた。

カバーなどは掛けられておらず
また画面はﾊﾞｯｷﾊﾞｷに割れていた。

しかも水に触れたのか電源ボタンを押しても起動する事はなく、真名部はｶﾁｶﾁと何度かボタンを押してから呆然とスマホを見遣る。

こんな所にスマホがある事自体にも驚いたが
何より驚いたのが、そのスマホが真名部の持っているスマホの機種と完全に一致していた。

画面はこんなに割れてはいなかったが、馴染みある重さに形。画面の大きさ。
このスマホはカバンの中から消えていたスマホに間違いないだろうと真名部は考えた。

でも何故こんな所に？
しかもどうして画面がこんなに割れている？

真名部は両親や友人と連絡を取り合う以外にスマホはほとんど触れずにカバンの中に入れっぱなしだった。

誘拐された当日もそうだ。
倒れた際に割れたとしても、おそらく画面全体が割れてほぼ見えなくなるまでには至らないだろう。
この画面の割れは人為的なモノだ。

それにこんな所にあるのも可笑しい。
機械は水がダメだと言うのに、シンクの中に放っておくだなんて。

完全に使えなくなった原因も水のせいだろう。

「(…まさか、)」

真名部の視線が再びAに向けられる。

Aはこちらに気付いていないのか
まだ掃除機片手にはしゃぎ回っていた。

そんな無邪気な彼女から、こんな事をするとは思えない。

だがしかし、この家には今現在、彼女以外の人間はいないのだ。犯人は必然的に彼女になる。

彼女が画面をここまでﾊﾞｷﾊﾞｷに割り
彼女がスマホを水に触れさせ、壊した。

『ずっと、ずっと、隠し事して…真名部を騙してても……真名部は私の事、好き？』

不意に浮かぶ、彼女の言葉。

真名部は呆然とAを見遣る。

「(……まさか……)」

視線の先のAはまるで子供のようで楽しそうだ。

だが次の瞬間、真名部の脳裏に浮かんだのは
警備員を殺した時の、ｶｯと目を見開いた顔。

「(…彼女は…)」

思えば度々違和感があった。

急に年相応に笑ったり、妙にわざとらしかったり。
そもそも、教養がなってないからと言ってここまで子供のような言動をするのだろうか。

「(彼女は…まだ、何かを隠している…？)」

イヤな汗が真名部の背中に流れる。

真名部は暫くスマホを持ったまま、動けなかった。