リボンの檻 3 【真名部陣一郎】 (ページ40)

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△リボンが135こ▽ ページ40

その後はAと場所を交代し、真名部がキッチンを担当する事になった。

Aには真名部がやっていた掃除機を託し
簡単な使い方を説明してやると、Aは嬉々として掃除機を使い始めた。

「わぁ～！なんかすっごいジャリジャリ言ってる～！楽し～い！！」

「(何が楽しいんでしょうか……)」

掃除機片手に楽しそうに部屋の中を走り回るA。

その様子から、先程足の上に茶碗が落ちたとは思えない程のはしゃぎっぷりで、真名部は彼女の足を気にしつつも、平気そうな彼女に複雑な感情を抱いた。

足の甲をぶつけたのなら、歩く時多少は痛むはずだ。

しかし彼女の様子からそんな事は微塵も感じさせない辺り、可笑しいのはAの方らしい。

本当なら今すぐにでも手当てしてやりたいところだが、他でもないAが「いらない」と言うのだから、あまり強く言えなかった。

彼女にとってあれぐらいの怪我は慣れているのだろうか。
だとすれば、一体どう生活すれば慣れてしまえるのか。

脳裏にチラつく彼女の母親の話。
真名部は思わず顔を顰めた。

「(……それにしても)」

ふと真名部の視線は再びAに向かう。

Aは感嘆の声を上げながら、掃除機を使い床のゴミを吸い取って行く。

だが途中で何かと戦い始めたのか、埃相手に決め台詞っぽいセリフを告げ、『ﾋﾟｭﾝﾋﾟｭﾝ』『ﾌﾞｫﾝﾌﾞｫﾝ』と効果音を叫びながらリビング中を駆け回った。

その様子はまるで玩具の車で遊ぶ子供のよう。

お皿を割って本格的に怪我するかもしれないと場所を交代したが、これはこれで転んで頭を打ったり、よそ見をして壁に激突しないか心配になるほど夢中で掃除機を掛けていた(というよりは遊んでいた)。

中身がまるで成長していない彼女に呆れつつも、何処か愛しさを覚え、真名部は目を細めると、次の皿を洗い始める。

シンクに山積みになっていた皿はどれも使われた痕跡があり、長い間放置されていたからか酷いニオイだった。

きっと悪臭の出処の1つなのだろう。
洗剤もそんなに残っていないようだし、洗う為のスポンジはあちこち破けていた。

量的に1回で洗い切れる量ではないだろう。
真名部は早々に溜息を吐いた。

「…………あれ？」

とりあえずまずは小さなお皿から洗っていると
不意に真名部は見覚えのある物を見つけてしまう。

1度手に付いた泡を水で洗い流し、真名部はソレを掴む。

そうして真名部は大きく目を見開いた。