リボンの檻 3 【真名部陣一郎】 (ページ18)

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△リボンが113こ▽ ページ18

「……」

Aはすぐには答えない。
何やら考えるように頭を左右に振るだけ。

その頭は本当に考えているのかいないのか。
若干の薄気味悪さを感じながらも、真名部は彼女が答えるのを待っていると、不意にAはﾆｺﾘといつもとは違う笑みを浮かべた。

「＿＿＿逃げてもいいよ」

「………………え」

彼女の答えに真名部は目を見開く。

呆然とAを見つめると、Aは微笑みを湛えたまま続けた。

「逃げたいなら、逃げてもいいよ。

そうしたらもう、私は追い掛けたりしないから」

そう言ってAは最後に無邪気に笑うと、本当にリビングを出て行ってしまった。

〝ﾄﾝﾄﾝ〟と階段を登る足音も微かに聞こえ
真名部は呆然とした後に頭を抱えると、ｸﾞﾁｬｸﾞﾁｬの思考のまま考える。

「………また、コレですか」

再び訪れた、逃げるチャンス。

しかも今度は誘拐した本人が逃げてもいいと言っている。

その言葉を信じるのなら、きっと逃げても彼女は本当に追い掛けて来ないのだろう。

そうなれば真名部は晴れて自由の身だ。
すぐさま警察にでも連絡して、両親の元に戻ればいいのだから。

Aの事を話せば警察もすぐに彼女を逮捕するだろう。話さなくても彼女が捕まるのは時間の問題かもしれない。

今回のデパートの件で何か手掛かりを残してしまい
その手掛かりを頼りに彼女は捕まってしまうかもしれない。

そうなってしまったら…どうなるのだろう？

法に基づいて裁かれるのは前提として
一体どんな罰を受けるのだろうか？

4人もの人間を殺し、挙句デパートでも警備員を殺したとなれば死罪だろうか？

そうでなくても長い間、刑務所に閉じ込められてしまうんだろう。最悪、終身刑になってしまうかもしれない。

「(……って、何故人殺しに同情しているんですか、自分は……)」

気付いたら彼女を思うような事ばかり考えていて
真名部は自分で自分が嫌になる。

どうも彼女の事となると拒絶するよりも寄り添うような事ばかり考えてしまう。
ここ数日彼女と過ごしていく内に絆されてしまったんだろうか。

だが相手は人殺し。
そんな人に同情なんてしても無意味だ。

罪をおかした事は取り消せない。
罪には罰を与えなければならない。
ソレがこの世界のルールであり、でなければ殺された人間が報われない。

真名部もその事は重々理解しているつもりではあったが、脳裏で彼女の無邪気な微笑みがチラつく度に、真名部は顔を顰めた。